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おさえておきたい基礎知識《化学物質のいろは》第29弾 規制が加速!? ビスフェノール類の最新規制動向

2026/03/25

 年度末の慌ただしさの中にも、春の兆しがふと心を和ませてくれる三月末。回りを見渡すと、私たちの日常生活には実に多くの化学物質が活用されていることに改めて気づきます。その性質を巧みに利用することで、私たちは豊かで便利な暮らしを享受してきました。一方で、化学物質は、いわば「副作用」とも呼ぶべきデメリットをもたらし、公害の発生や生態系への深刻な影響を招いてきたことも否定できません。このような動きの中で注目を集めているのが「ビスフェノール類」です。ビスフェノール類の代表的な物質であるビスフェノールA (BPA) から他の物質へ代替が進む中で、代替物質に対する規制も強化されています。2026年2月に更新されたREACH規則の第35次SVHC(高懸念物質)リストでは、「ビスフェノールAF」が新たに追加されました。さらに、規制の対象は代替物質にとどまらず、ビスフェノール類の関連物質にも広がっています。

 今回の「化学物質のいろは」では、第3弾「ビスフェノールA」や第14弾「ビスフェノール類」で紹介した内容を踏まえつつ、ビスフェノール類の基礎知識から世界の規制動向まで、最新情報をわかりやすくお届けします。

ビスフェノール類とは?その特性と用途

ビスフェノール類とは、2個のヒドロキシフェニル基が結合した化合物の総称です。

表1 主なビスフェノール類及び関連物質

種類略称CAS NO.
Bisphenol A (ビスフェノールA)BPA80-05-7
Bisphenol B (ビスフェノールB)BPB77-40-7
Bisphenol S (ビスフェノールS)BPS80-09-1
Bisphenol F (ビスフェノールF)BPF620-92-8
Bisphenol AF (ビスフェノールAF)BPAF1478-61-1
2,2’-Methylene Bis(4-methyl-6-tert-butylphenol)DBMC119-47-1
Bis(4-chlorophenyl) SulphoneDCDPS80-07-9
Diphenyl (2,4,6-trimethylbenzoyl)Phosphine OxideTPO75980-60-8
Bis-(α,α-dimethylbenzyl)-peroxideDicumyl Peroxide80-43-3

▶ビスフェノールA(BPA)

 用途: 食品容器、包装材料、殺菌剤、酸化防止剤、感熱紙など幅広く使用されています。
 毒性: 内分泌かく乱作用(環境ホルモン)により、胎児や乳幼児の生殖機能・発達へ悪影響を及ぼす
     懸念が指摘されています。

 BPAは主にプラスチックの原料として広く使用されてきましたが、その毒性が指摘され、世界的に代替
 物質への転換(BPAフリー化)が進んでいます。

図1 ビスフェノールA 構造式

▶ 主な代替物質(BPB, BPF, BPS, BPAF)

 これらは主に、規制が進むビスフェノールAの代替物質として普及してきました。しかし近年では、
 これらの物質についても、ビスフェノールAと同様に内分泌かく乱作用が疑われています。

▶ 主な関連物質(DBMC, DCDPS, TPO, Dicumyl Peroxide)

 ビスフェノールと類似した化学構造をもつ物質群です。その構造の特徴から、ビスフェノール関連
 物質として、規制及び環境・人体への影響の観点で注目されています。

世界の規制動向

▶ 日本:食品衛生法

 ポリカーボネート製の器具および容器包装について、BPAの溶出試験規格が 2.5 ppm以下に制限されて
 います。

▶ 日本:化審法

 BPAが「優先評価化学物質」に指定されています。2010年度以降、年間1トン以上製造、または輸出
 する際は届け出が必要です。

▶ 欧州:REACH規則

 BPA,BPB,BPS,BPAFは、物質・混合物・成形品中で0.1重量%以上の場合、上市が制限されています。

 2026年2月、欧州化学品庁(ECHA)は BPFのSVHC指定を一度見送りましたが、今後再検討する可能性があります。また、関連物質であるDBMC, DCDPS, TPO, Dicumyl PeroxideもSVHCリストに収載されています。一方2025年11月には、ECHAがTPOをREACH認可対象物質リスト(付属書XIV)へ追加することを提案しています。欧州委員会が採択した場合、企業は継続使用のために申請を行い、審査を受ける必要があります。

▶ 米国:プロポジション65(カリフォルニア州法)

 BPA, BPSは、生殖毒性物質として規制対象物質リストに収載されています。

▶ カナダ:CCPSA(カナダ消費者製品安全法)

 ポリカーボネート製の哺乳瓶等において、BPAの使用が禁止されています。

▶ 中国:GB規格(中国国家標準規格)

 2025年9月、食品接触材料および製品において、BPAの基準値を0.6 mg/kgから0.05 mg/kgへ引き下
 げることが発表されました。

エコテックス®の最新動向

 昨今の規制強化に伴い、エコテックス®においても一部物質(BPB, BPS,BPF, BPAF)の規制値が変更されます。新規制値は3か月の移行期間を経て2026年6月より適用予定です。
 また、SVHCに指定されている関連物質(DBMC, DCDPS, TPO, Dicumyl Peroxide)は、すでにエコテックス®の規制対象となっています。エコテックス®認証を取得することで、各国の規制強化にも幅広く対応できる体制を整えることが可能です。

表2 エコテックス®各認証におけるビスフェノール類及び関連物質の規制値 (単位:mg/kg)

規制物質スタンダード100レザースタンダードオーガニックコットンエコパスポート
BPA101010100
DBMC, DCDPS, TPO, Dicumyl Peroxide1,0001,0001,0001,000
※レザースタンダードにおけるBPSの規制値変更は、1年間の猶予期間を経て2027年6月1日より適用

化学試験事業部からの耳より情報!

 BPA規制が進む中、BPSなどの代替物質に加え、DBMCなどの関連物質にまで規制対象が広がりつつあります。多くのビスフェノール類で内分泌かく乱作用が懸念されており、“BPAフリー”だけでは不十分とされています。企業としては、ビスフェノール類全体の動向を継続的に把握し、将来の規制強化を見据えた管理体制の構築が求められます。
 今後も「化学物質のいろは」では、化学物質に関する最新情報をお届けしてまいります。また、昨年スタートしたニッセンケン公式Instagramでは、海外通販サイトで購入した製品からPFASが検出された事例など、興味深い話題も紹介しています。ぜひご覧ください。

【有害化学物質に関するお問い合わせ先】
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
ライフ アンド ヘルス事業本部 化学試験事業部
E-mail : oeko-tex@nissenken.or.jp

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