2025/04/07
《化学物質のいろは》第18弾 MCCP (中鎖塩素化パラフィン)
おさえておきたい基礎知識
2025/06/03
徐々に暑さが増してくるこの季節、今夏も暑さが猛威を振るうのか心配になりますね。一年の中で紫外線が最も強くなるこの時期、日焼け対策は欠かせませんが、繊維製品にも“日焼け対策”がされていることをご存じでしょうか?それが紫外線による製品の劣化を防止するために使用されている紫外線吸収剤/安定剤です。昨今、世界的に規制を厳格化する動きが見られており、それを受け、エコテックス®基準における紫外線吸収剤/安定剤の規制値も、この4月より引き下げられました。今月の 《化学物質のいろは》では、紫外線吸収剤/安定剤の使用リスクと最新の規制動向をご紹介します。
紫外線吸収剤/安定剤(UV stabilizers)とは、紫外線による素材の劣化を防ぐために使用される添加剤です。ポリエステルやナイロンなどの合成繊維に使用することで、色あせ・強度低下・黄変などの品質劣化を防ぐ役割を担っています。アパレル製品では、スポーツウエアやアウトドア用品、日焼け防止機能を持つ衣料品などに使用されることがあります。 紫外線吸収剤/安定剤を代表する種類として、「UV-328」(2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール, 2-(2H-Benzotriazol-2-yl)-4,6-di-tert-pentylphol, CAS No. 25973-55-1)があります。これはベンゾトリアゾール系に属する化合物で、図1のような化学構造を持っています。
図1 UV-328の化学構造
◆人体への影響
繊維製品に含まれる紫外線吸収剤/安定剤は、接触性皮膚炎の症状を引き起こすおそれがあります。また、汗や皮脂との接触によって皮膚から体内に取り込まれる可能性があり、内分泌かく乱作用やアレルギー反応などを引き起こすリスクが指摘されています。特に子どもや妊婦への影響が懸念されています。
◆環境への影響
製品の製造過程などで紫外線吸収剤/安定剤が河川や海、土壌へ流れ込んだ場合、魚や甲殻類、サンゴなどの水生生物へ有害な影響を与える可能性があります。また、多くの紫外線安定剤は、環境中で分解されにくく、残留性有機汚染物質(POPs※1)として懸念されています。
POPs※1 難分解性、高蓄積性、長距離移動性、有害性(人体・環境)をもつ物質のことを指します。POPsによる世界規模の汚染が懸念されることから、「残留有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)が採択され、2004年5月に発効しています。
紫外線吸収剤/安定剤の使用は、人体や環境に様々なリスクがあることから、世界では以下のような規制がなされています。
▶ストックホルム条約(POPs条約)
UV-328:2025年2月より、「附属書A廃絶」への追加が発効され、条約締約国での製造および使用は原
則禁止されています(個別の適用除外あり)。
▶欧州
UV-320、UV-327、UV-328、UV-350:REACH規則の附属書XIVの認可対象となっています。附属書
XIVには、人の健康・環境に対する影響が極めて大きく、その影響が不可逆である懸念が高い物質が収
載されています。
UV-326、UV-329:2024年1月に、REACH規則のSVHC(高懸念物質)に追加されました。
SVHCとは、附属書XIVに収載される認可対象物質の候補になる物質です。
▶日本
UV-320:化審法において第一種特定化学物質に指定されています。第一種特定化学物質とは、難分解
性、高蓄積性、長期毒性または高次捕食動物への慢性毒性を有する化学物質で、原則として製造や輸
入、使用が禁止されています。
UV-328:POPs条約の改正を受け、2025年2月より化審法の第一種特定化学物質への指定が施行され
ました。
図2 紫外線吸収剤/安定剤 世界の規制動向
エコテックス®基準ではこれまでも、紫外線吸収剤/安定剤を規制対象としてきましたが、近年の世界的な規制強化を受け、2025 年4月1日より規制値の変更を行いました。POPs 条約で規制対象となったUV328 は特に、規制値が大幅に引き下げられ、より厳しい規制が設けられました。(表1 参照)
表1 エコテックス®各認証における紫外線吸収剤/安定剤の規制値変更
エコテックス®は現在、100 を超える国々のメーカー、ブランド、商社など 35,000 社に導入されています。同時に、世界中の何百万人もの消費者がエコテックス®ラベルが付与された商品を購入するなど、人々の責任ある購買の意思決定を行う際の指針となっています。その信頼は一貫して厳格な基準に基づいて築かれるとの考えから、エコテックス®国際共同体は毎年認証に適用する試験基準、規制値、ガイドラインの更新を行っています。2025 年4月に発効した新規制と新規取組みでは、紫外線吸収剤/安定剤以外に、ビスフェノールA、メトキシクロルの規制値も変更となっています。詳しくは「エコテックス®国際共同体発表 / 2025 年4 月発効 エコテックス®の新規制と新規取組み」を参照ください。
エコテックス®認証では世界の最新の規制動向を取り入れており、当認証を取得することで繊維製品の様々な規格や法律に対応が可能です。今後もエコテックス®にぜひご注目ください!!
【有害化学物質に関するお問い合わせ先】
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
ライフ アンド ヘルス事業本部 化学試験事業部
E-mail : oeko-tex@nissenken.or.jp
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