2017/03/15
No. 84 「小路と路地の使い分けで防災対策…」
思いつきラボ
2014/05/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2014年5月15日時点の内容です。
ニッセンケンでは定期的に公開講座を開いております。開催を重ねていくことで認知度が高まったのか、申し込みが増えており、ありがたいことと感謝しております。新年度になり、新人さん向けの基礎的な内容が中心となっているのですが、筆者も講話を担当することもあります。東京・大阪・中部と開催場所も増やしていて、テキストも当センターの職員が作成したものを共通して使っているのですが、これがなかなかよくできた資料なのです。身内が褒めても信頼性を疑われますが、世間でいうところの自画自賛です。
公開講座は外部向けのもので、内部研修ももちろん行ってはいるのですが、全部の職員が同じタイミングで受講できるわけでもないので、この思いつきラボでも紹介していくことにします。とはいえ筆者の原稿は話がよく逸(そ)れますので、繊維の基礎知識ー四方山(よもやま)話といった感じかも・・・。まずは繊維の主な分類方法の解説です。
という区分にしています。
衣料品を中心に考えたときの分け方になっています。天然繊維は植物系と動物系の二種類、化学繊維は再生・半合成・合成の三種類ということで覚えておくのが基本になります。これが資材で使う繊維も含むと、例えば筆者が繊維業界の新人のときには、天然繊維は鉱物系の石綿(アスベスト)が加えられていました。今では有害物質の扱いとなっていますが、当時は燃えない繊維の代表として重宝されていたのです。
資材ではその他にもガラス繊維や炭素繊維などがありますが、化学繊維には分類せず、一般的には無機繊維として区分されます。「炭素繊維は無機繊維ではないだろう」という意見もあり、無理に区分する必要もないのかもしれません。金属繊維も「金属が糸のようになってもそれは針金で針金は糸とは呼ばないだろう」という意見もあり、実はちゃんとした分類はできないのかもしれません。解説が余計にややこしくしたかも・・・。
分類の図を見てもらえば分かるように、“化学繊維”と“合成繊維”は別のものです。よく混同されることがあるのですが、合成繊維は化学繊維の中の一分類なのです。ややこしくしている一因に“化合繊”という言葉があります。紡績会社では天然繊維を扱う部署が“短繊維部隊”と呼び、合成繊維の長繊維を扱う部隊を“化合繊部隊”と呼んでいました。繊維の長い歴史の上で慣例化されたのでしょうが、”化合繊”は“化学合成繊維”の略で合成繊維と同じ扱いで使われることが多いです。
植物繊維で家庭用品品質表示法の中に指定用語で定められているのは“麻”と“綿”だけです。しかも麻は亜麻(あま)と苧麻(ちょま)のみ麻表示ができて、黄麻(こうま)大麻(たいま)マニラ麻などは指定外繊維の扱いとなります。基礎講座なのでおさらいしておきますが、亜麻はリネン、苧麻はラミーのことで、黄麻はジュート、大麻はヘンプとも呼ばれています。マニラ麻は麻の名前がついていますが亜麻や苧麻とは種類が違い、沖縄の芭蕉布(ばしょうふ)と同じバショウの仲間になります。その他の植物繊維はバナナ繊維や竹繊維などがあります。
“綿”に関する雑学はといいますと(いつの間にか基礎講座が雑学講座になっています)、先ほど説明した麻が植物の種類で分類されるのに綿は産出国で分類されることが多いです。エジプト綿・インド綿・中国綿・アメリカ綿などで呼ばれることが通例になっています。筆者が繊維業界に身を置いたときはまだソビエト連邦が存在していて、ソ連綿という綿もありました。ソ連が解体されたときにソ連綿の呼称はどうなるのかと業界内では話題にしていたのですが、印刷物に“旧ソ連綿”の表示をみたときは思わず笑ってしまいました。結局のところはしばらくの間そのままソ連綿という呼称が使われていたと記憶しています。今は全く聞かなくなってしまいましたが、当時ソ連綿は品質の良い長綿で高級綿としての位置付けにありました。
長綿という言葉がでてきたので説明しておきますと、高級綿素材として“超長綿”という単語はよく耳にすると思いますが、一般的な綿は1本の繊維長が21mm~28mmくらいのものを指します。21mm以下のものを短綿、28mmを超えるものを長綿と区分します。さらに35mmを超えたものを超長綿とよび、綿の最高級品として取扱いされています。21mm・28mm・35mm は厳密な数字ではなくおよその数字ですので、取扱い団体で多少の数字のズレはあります。7の倍数で覚えやすいので目安の数字としての基準になっています。
超長綿が高級とされるのは、単に生産量が少ないということだけではなく、1本の繊維長が細くて長いので光沢感があり、風合いも滑らかなことが人気となっているからなのです。短綿は1本の繊維長が短くて太いので、軽くて吸水性の高いことが特徴になります。その利点を利用して脱脂綿やガーゼに使用されています。代表的な超長綿は“海島綿(かいとうめん)”と呼ばれるもので、西インド諸島のみで産出されるもので、イギリス管轄になってからは英国皇室御用達となってしまい、海外に輸出されることはなかったようです。初めて日本に輸入されたのが1975年(昭和50年)頃で、業界ではかなりの話題になりました。
それまでは超長綿はエジプト綿とペルー綿くらいしかなかったと記憶しています。いまでも海島綿は綿の 中では最高級品の扱いになっています。“シルクのような光沢感とカシミヤのような柔らかさ”が謳(うた)い文句になっていて、さらに綿は糸の中が空洞になった中空糸ですので軽いことも特徴になります。軽くて光沢があって肌触りがよいというのは、繊維製品に求められる重要な要因なのかもしれません。
話は飛びますが麻のところで出てきた“芭蕉布”について説明しておきます。沖縄県民の方はもちろん、沖縄へ行かれた方は土産物屋さんで“芭蕉布”の製品を見られたかたも多いとは思いますが、沖縄では4~500年前から受け継がれている植物系繊維の生地なのです。麻の特徴と同じで吸水性・発散性に優れ通気性のよいことから、温暖な地域に適した素材といえます。人間の生活の知恵はやはり素晴らしいものがあります。日本伝統の素材ですので沖縄旅行の際は是非お土産におすすめいたします。
といいながら筆者は人への土産では買うものの、自分のものは持ち合わせていないことを原稿を書きながら気が付きました。
今回の思いつきラボの 繊維の雑学知識(基礎知識はどこへ・・・?)はこの辺りで・・・。
一般的な繊維の基礎講座に“芭蕉布”などは出てきませんので、筆者が担当する講話が長くなるのが判ります。もちろん今後のコラムでも基礎講座になるか雑学講座になるか分かりませんが、続きを掲載していきたいと思っております。
たまたまこのコラムにたどり着いて興味を持たれた方は、ニッセンケンの公開講座にも是非参加ください。
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竹中 直(チョク)
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