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思いつきラボ
2015/06/30
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2015年6月30日時点の内容です。
早くも 6月末を迎えて 2015年も半分が過ぎようとしています。充実しているのかモタモタしているのか判りませんが、時間(とき)の経つのは速いものです・・・このフレーズ年齢を重ねた人ほど多くなります。
今回のテーマは、大阪事業所で不定期ではありますが、職員向けに開く勉強会からのお話しになります。ここ最近の大阪勉強会は、5月に安全データシート(SDS)に関する基礎知識、6月にアパレル問題に関する勉強会が開かれて、職員も積極的に参加してなかなか有意義なものになっています。
その中で紹介したいのが、6月の勉強会で“家庭用品品質表示法 繊維製品品質表示規定 Q&A”という項目があって、下記がその問題です。
(問)指定用語について・・・すべて法律(家表法)違反です!
という問題がプロジェクターに映し出され、それぞれについて間違っている部分の解説があったのですが、折角なので皆さんも考えてみてください。
資格試験での過去に出された問題とのことで、8問中いくつ正解できるでしょうか。というような講話があったのですが、勉強会に出て来れなかった人たちにも知ってもらうために、試験課の責任者に模範解答つけて回覧しておいてとお願いしたところ、ちょっと御茶目な解説がついて回ってきました。答えの前に組成表示についての解説です。
品質表示のき・ほ・ん
組成表示はみんなが服を買う時の値段の目安になったり、洗たく・着用の際に取扱いをどうすれば良いのかを判断する材料のひとつになるものだよ。
家庭用品品質表示法という法律で細かな表示方法が決められているんだ。
① 指定用語
製品に表示をする時、繊維の名前を好き勝手に表示されては混乱するので、繊維の種類によって使える言葉が決められているんだ。(コラムの最後に指定用語一覧URLを載せてるよ。)
② 混用率の表示
「全体表示」と「分離表示」の二通りの方法で表示ができるよ。
「全体表示」は、製品に使用されている繊維とその製品全体に対する重量割合を、パーセントで表示するんだ。その製品が何の繊維で作られ、どれくらいの量を使っているのかを、多いものから順に表示する基本となる表示方法だよ。
「分離表示」は、組成の違う2種類以上の糸や生地を使った時に、その部分ごとにそれぞれ100として混用率を表示出来るんだ。
分離表示は、製品に表示を付けるときに、とても有難い表示方法なんだよ。
たとえば、袖口のリブ生地に本体の組成とは違う生地(繊維)を使った場合、製品のサイズが変わるだけで、その部分ごとの使用量(重量割合)も変わるでしょ。だから、製品全体を100として算出するとなると、サイズごとにパーツの重さと使用量を全部調べないといけないし、「全体表示」となると、サイズごとにラベルも付け替えないといけないんだ。そんなの大変でしょ? コスト上がるし・・・
だから「分離表示」は、表示しやすく、簡単で解りやすい表示方法なんだ。
分離表示をするときは、分け方に特に決まりはないけど、分けた部分をわかりやすく書く必要があるよ。
つぎのような表示はだめです。わかるかな?
「表地」は「裏地」と対になる言葉だから、裏地がないものに表地と表示することは紛らわしい表示になるんだ。 裏があって、表がある・・・
③ 表示者名及び連絡先
表示には、表示者の「氏名又は名称」及び「住所又は電話番号」も必要なんだ。また、品質表示の内容(繊維の組成)を、下げ札や縫込みなど二つ以上に表示をするときは、それぞれに表示者名等を付ける必要があるよ。
製品に組成表示が付いていても、表示者名と連絡先の記載がないと、品質表示として認められないから気をつけて。また、社名・団体名は法人登記された正式名称で書くことになっているから、勝手に略称、ローマ字などで表示することはできないよ。
④ 表示ラベルを付ける場所
ラベルの大きさや形、字体などについては決まったものはないけど、お店に並べたときに見やすい場所に、見やすく表示する必要があるよ。
と分かりやすい口調文体にまとめてくれています。
そこで正解を掲載しますと
が正しい表示になるのですがこれにも解説をつけてくれています。
ちょこっと解説
モヘヤ(指定用語)
モヘヤ、カシミヤは間違われやすい繊維TOP3にはいる・・・?
「モヘア」のほうが発音しやすいから?おなじ「毛」でも「髪の毛」は「ヘア」だよね。あれっ!?「ヘヤー」だっけ・・・?
(毛の中のカシミヤの割合50%)
決められた指定用語のなかで、毛の繊維の種類が一番多いです。なんと10種類。羊毛にいたっては、4種類。「毛」「羊毛」「ウール」「WOOL」どれを使っても問題ないけど、こんなにいる!?
組成表示の下の括弧書き等の表示については、任意表示とみなされます。「毛」も「カシミヤ」も指定用語であるため、獣毛混用率がはっきりしているのに、任意表示をするのは、紛らわしい表示になります。毛 90% ナイロン 10%の表示でも問題ないです。
レーヨン(ベンベルグ)
ベンベルグはキュプラの商標名。指定用語の後に括弧書きで付記できるのは、商標名だけです。
キュプラはレーヨンと同じ再生繊維で、銅アンモニアレーヨンともいう。ビスコースレーヨン(レーヨン)とは原料・製造方法の違いで区別されます。
指定外繊維(抄繊糸)
抄繊糸(しょうせんし)は、和紙を細く(2~3mm)切って、撚りをかけて糸にしたものです。
指定用語が決められていないその他の繊維は、全て指定外繊維になります。「指定外繊維」の用語に、その繊維の名称を示す用語又は商標を括弧書きで付記します。抄繊糸は、繊維ではなく糸なので、だめという事になります。
LINEN
指定用語は麻です。LINEN(リネン)は、亜麻(あま)という草の茎から作る麻です。他にも、苧麻(ラミー)、大麻(ヘンプ)、黄麻(ジュート)、洋麻(ケナフ)などがあります。
麻と表示ができるのは、亜麻と苧麻だけなので、それ以外は指定外繊維という事になります。
毛(ビキューナ)
指定用語に付記できるのは、商標のみです。ビキューナの毛は指定用語にないため、その他の毛(指定用語は「毛」)になります。ビキューナの表示をしたい場合は、品質表示の下に任意で表示をします。
指定外繊維(モダール)
モダールはレーヨンの商標です。指定用語は「レーヨン」であり、商標である「モダール」を付記することができます。
指定外繊維(ポリオレフィン系弾性繊維)
この表示は何がいけないの?と思っていた方も、もう解りますよね。判らない方は、もう一度読み返して下さい。
組成表示で気をつけたいのは、指定用語とそれ以外の繊維。そして、括弧書きの使い方にあるでしょう。括弧の使い方ひとつで、意味合いが変わってくるので、正しい知識を身につけて、正しい品質表示を覚えましょう。
以上、ちょこっと説明でした。
契約職員さんや派遣職員さんたちにも回覧しますので、できるだけ読みやすく分かりやすいものにしてもらったのですが、なかなか楽しい解説になりました。勉強会原稿なので消費者庁の定める指定用語の一覧を掲載しておきます。勉強会も楽しいものです。
原稿担当:大阪事業所 高橋 正典
大阪事業所 内山 雅章
監修:竹中 直(チョク)
PDF版はこちらから
※最終ページに指定用語一覧を掲載しています。ご参考ください。
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一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp
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