2018/01/15
No. 104 「五本指手袋とミトン手袋 どちらが暖かいのでしょうか? …」
思いつきラボ
2014/12/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2014年12月15日時点の内容です。
2014年も最後の月となってしまいました。聞き飽きたフレーズですが、 時間(とき)の経つのは本当に速いものです 。
今年の最初の思いつきラボ(1月15日号)のコーナーで「絞り染めを体験してみよう・・・」という原稿を掲載してからずっとmつぎは“加賀友禅”の体験染めを取り上げたいと思っていました。ところが話を聞いてみると、絞り染めより時間が掛かるのと工程の中に生地を“蒸気で蒸す”というのがあるので段取りを考えようとしたまま・・・サボってしまいました。
とはいえ、“加賀友禅”を取り上げたいと思った理由は紹介したい作品があるからなのです。当センターにもいろいろな経歴や特技を持った仲間がいまして、学生の時に“伝統加賀友禅工芸展覧会”で最優秀の金賞を受賞した逸材が在籍しているのです。エコテックス事業所の 前田 朋美(まえだともみ)さんで金沢美術工芸大学大学院2年生の時に応募したものだそうです。
「第32回 伝統加賀友禅工芸展覧会」での受賞で、この年から一般公募が認められるようになったとのことで、それまでは業界内で認められるようになった作家だけの応募に限られていたそうです。
公募が採用されるようになったその年に金賞受賞というのは、快挙という言葉しかありません。審査は出品者の名前を伏せて作品だけで判定するという方法で、出展数は着物と帯合わせて54点で、着物の部43点の中から選ばれたものとのことです。ということで彼女の作品画像を紹介します。
今回のコラムは作者本人が“友禅染め”について原稿を用意してくれましたので、掲載させていただきます。
1日本の伝統的な染色技法のひとつに「友禅染め」というものがあります。訪問着や風呂敷だけではなく、最近ではフロアライトやインテリアパネルといった装飾品にこの友禅染めを施したものがあります。友禅染めというのは、糊で防染して模様を表現するものであり、その創始者の宮崎友禅斎の名に由来します。特徴は模様の輪郭を防染するために輪郭は白く残り、美しさの生命線ともいえます。
プリントとはまた違った染色品ならではの上品さがあり、一色一色を手で入れていくことによって多彩な表現を込めることができます。「京友禅」、「加賀友禅」など産地によってデザインや色使いに特長があります。
1 下絵(したえ)
仕上がりをイメージし、デザインを練ります。すべての工程の中でこの「図案 作り」が一番大切です。
写生からスタートし、イメージをデザイン化します。
2 青花(あおばな)
染色する生地にこの下絵を写します。
この青花というのは、つゆくさの青い花をしぼって作ったものであり水で消えます。
3 糊置き(のりおき)
染めない部分に糊を置き、防染します。
この防染部分はたんなる輪郭線ととらえずに、図案の一部ととらえます。
筒の中に適度な硬さに調節した糊を入れ、青花で描いた下絵をなぞっていきます。
4 地入れ(ぢいれ)
生地の上に置いた糊を、今度は生地の中まで浸透させます。
刷毛で地入れをし、生地の下から熱をかけてすばやく乾かします。糊が水分でふやけ、太くなります。
5 彩色(さいしき)
染料を溶かしてある程度の色数を準備し、模様の中に筆で色を入れていきます。作った色を混色することで何種類もの色を濃淡作ることができます。水彩画を描く感覚に近いです。
6 下蒸し(したむし)
蒸気で生地を数十分蒸します。
蒸すことで染料が膨張した繊維の間に入っていきます。
7 水元(みずもと)
蒸した生地を洗います。
糊を落とし、余分な染料をおとすので念入りに行います。
8 中埋め(なかうめ)
今度は、背景の色を染めるための工程です。
模様の中に色が入らないよう、色を入れた模様の上に先ほどの糊を置いていきます。
9 地染め(ぢぞめ)
背景の色を作り、刷毛で色を引いていきます。
むらのないように染めるのは技術のいることで数回この工程を繰り返すこともあります。
10 蒸し(むし)
地染めの色を定着させるため、再度蒸します。
11 水元(みずもと)
糊、余分な染料を落とすために再度洗います。
以上が友禅染めのおおまかな流れです。
通常は水で落とせる糊を使いますが、ゴム糊という水で落ちないものもあります。ゴム糊のほうがシャープな線を描くことができます。このように工程が多く、時間と労力を要する友禅染めですが、自由に模様を描くことができ、色の濃淡や色彩の効果で奥行や立体感も表現することができます。すべての工程のなかで一番神経をつかうのは、デザインを考えるときです。友禅は線で表現するので細かいところまで図案を描きます。染料の種類によってはどんな生地にも友禅染めを施すことができます。
タイトル は「幻影」です。自然の花や植物を凝視したとき、きれいだという感覚だけではなくぞっとするような感覚をもちました。「美しさ」とは対極にあるようなこの毒々しさのようなものを色や線で表現したいという想いが私の制作テーマです。
“友禅”って人の名前だったのですね。友禅染めの手順もわかりましたので、次は染め体験ができるように準備したいと思っています。“京友禅”と“加賀友禅”の特徴の違いなども知りたいと思いますが、今回のところはこの辺で・・・それにしても見事なもので実物を見たいものです。
原稿担当 エコテックス事業所 化学試験課 前田 朋美 竹中 直(チョク)
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防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
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