2016/07/30
No. 69 「花火の色はどうやって造り出されて いるのだろうか …」
思いつきラボ
2014/11/30
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2014年11月30日時点の内容です。
繊維の業界に居ると、“ジャカード・ジャガード”どちらが正しいかという議論に何度も出くわしていると思いますが、新人さんたちにとっては単純な疑問として抱(いだ)くことになります。
思いつきラボ向きの題材なので、一度整理しておきたいと思います。
その前に今回のような複数の言葉のどちらが正しいのかという判断に現代社会ならではの方法を教えてもらいました。ネット検索で判定するというもので、筆者の年代の者としてはなんとも新鮮な情報になりました。(あなたがアナログなだけです!!)
ということでさっそく検索をかけてみると
“か”(ジャカード)約946,000 件
“が”(ジャガード)約1.640,000 件
なんと“が”(ジャガード)の方が大差をつけて多いという結果になりました。
そんなバカな・・・と思われた皆様これが現実のようです。
こんな書き出しから想像できるように、本来は“か”(ジャカード)が正しいのです。ジャカード織機を考案した人物がフランス人のジョセフ・マリー・ジャカール(Joseph Marie Jacquard )ジャカールの英語読みがジャカードとなります。教科書や文献ではちゃんと“か”ジャカードとなっていると思いますので、気になる方は確かめてみてください。
かといって、数字が示すように普段の会話では“が”(ジャガード)の方が多く使われているようなので、間違いとも言いにくい状況ではあります。ものづくりの担当の人たちは正しくは“か”(ジャカード)と知っている上で“が”(ジャガード)と使っているひとは多いと思います。ようは知っていても“が”の方が発音しやすいから“が”(ジャガード)が浸透してしまったということのようです。ちょっと面白いので、今度は“ジャカード織物とジャガード織物”で検索してみましょう。
“か”(ジャカート織物)約204,000 件
“が”(ジャガード織物)約184,000 件
かろうじて“か”(ジャカード織物)の方が上回りました。これは業界の人の割合が増えたからと推測されます。続けて“ジャカード織機とジャガード織機”の比較を見てみると
“か”(ジャカード織機)約58,700 件
“が”(ジャガード織機)役47,400 件
こちらもかろうじて・・・といった感じです。テキスタイル会社やアパレル会社では明確に使い分けしていると思いますが、ファッション業界となると統一感はなさそうです。お客様が“ジャカート”で依頼があれば“ジャカート”で“ジャガード”で申し入れがあれば“ジャガード”という対応になるのが妥当のような気がします。すでに“ジャガード”も市民権を得ているといってよいと思います。
言葉だけの話になってしまいましたが、ジャカード織機について説明しておきます。
柄織機のひとつで、パンチカードという厚手の紙に穴をあけたカードの指示によって生地を織り上げていく機械のことです。パンチカードに開けた一つひとつの穴にタテ糸が表にでるかヨコ糸が表かの情報をもたせていて、複雑な柄模様を織り上げることのできる機械なのです。柄物が特徴なのでジャカード機で織った柄物のことを“ジャカード柄”と呼ぶようになり、さらに簡略化されて柄物のことを“ジャカード”というようになったと考えられます。
柄織機の代表的なものにドビー織機と呼ばれる機械も多くありますが、ドビーはあまり大きな柄を織り上げられないので、大きな柄や複雑な柄はジャカート織機によって作られることが多いです。柄物のことを“ジャカード”と呼ぶようになったので、本来は織物の用語だったのがニットの生地でも“ジャカード編”といわれるようになっています。ジャカードニットと聞いても違和感を感じないと思います。結論的に言えば「柄物のことをジャカードもしくはジャガードと表現します」といったところでしょうか。
話は逸れますが、近年「“か”と“が”」で話題になったものがあります。アボカドという果実はいまやメジャーになっていますが、十数年前にアボカドが市場に出回りはじめた頃は“が”(アボガド)だったのです。テレビやラジオで使用する放送用語に掲載されていないころは“アボガド”と発音していたそうです。放送用語辞典に掲載することになってアボカド(英avocado )に訂正されたそうです。筆者の年代では今もって“が”(アボガド)と言ってしまいます。“か”よりも“が”のほうが日本語では発音しやすいみたいです。
もともと日本語でも雨(あめ)を雨音(あまおと)や雨傘(あまがさ)のように“あめ”を“あま”と置き換えたり、酒(さけ)を酒屋(さかや)酒蔵(さかぐら)のように“さけ”を“さか”に読み替えたりしています。これもひとつの名詞のときだけのようで、「酒(さけ)や酒(さけ)や酒持ってこい」の「酒や」は“さけ”で“さかやさかや”とはなりません。「酒ぐらい飲ませろや」といったときも“さかぐらい飲ませろ”にはなりません。日本語は本当に難しいです。
たとえ話のせいかそろそろ原稿を終えて夜の街にくりだしたい気分になってしまいましたので、今回はこの辺で・・・話が逸れすぎました。
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