思いつきラボ

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No. 93 「降雨耐性試験の設定降雨量 284mm/hr というのは…」

2017/07/30

繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。

※2017年7月30日時点の内容です。

前号(7月15日号)で取り上げた九州北部の大雨に 7月19日「平成 29年 7月 九州北部豪雨」と被害名が命名されました。これは大きな被害があったときに後の世代に伝承するために記録を残すよう定めるものなのですが、今回の豪雨も大きな被害をもたらしたので、その現況や災害対応の記録なども残し、同規模の豪雨があったときにどう対処すべきかを考えるデータにするということなのです。
目立ったのが流木の量で、7月29日の国土交通省の発表によると、流木の量は重さにして推定で 17万トンに達するとアナウンスされていました。とにかく異常な量の流木が被害を大きくしたのも予測のしにくい特徴的なことでした。

7月は九州北部豪雨のあとも東北・北海道・北陸などで集中豪雨が記録され、さらには北海道でも 35℃を超す猛暑日が続き、全国で豪雨と猛暑の報道が繰り返し発せられています。“観測史上初めての記録”とか“観測を始めてから最高の記録”とか“数十年ぶりに記録を塗りかえた”のような表現を頻繁に聞くようになりました。
よくよく耳を傾けると全国の記録ではなく、その地域や観測所の記録であったりすることも多いので、数字を全国のものと勘違いをすることもあり国内での最高記録が気になり調べることにしました。

降水量の国内最高記録

まず降水量なのですが、民間団体などの記録と気象庁のデータと異なることがあるのですが、これは観測地点が異なるので差がでてしまいます。
今回は国土交通省気象庁のデータで紹介しておきたいと思います。降水量の報道では“1日の降水量が・・・” “降り始めからの降水量・・・” “1時間あたりの降水量・・・” “3時間あたりの降水量・・・”などいろいろな単位で報道されるのですが、基本的な“1時間あたりと1日の降水量”のベスト 5を紹介しておきます。

最大 1時間降水量

1位千葉県 香取  (香取市)153mm/hr1999年10月27日
 長崎県 長浦岳 (長崎市)153mm/hr1982年 7月23日
3位沖縄県 多良間 (宮古郡)152mm/hr1988年 4月28日
4位熊本県 甲佐  (上益城郡)150mm/hr2016年 6月21日
 高知県 清水  (土佐清水市)150mm/hr1944年10月17日

最大 1日降水量

1位高知県 魚梁瀬 (安芸郡)851.5/日2011年 7月19日
2位奈良県 日出岳 (吉野郡)844  /日1982年 8月 1日
3位三重県 尾鷲  (尾鷲市)806.0/日1968年 9月26日
4位香川県 内海  (小豆郡)790  /日1976年 9月11日
5位沖縄県 与那国島(八重山郡)765.0/日2008年 9月13日

となっているのですが、なんとデータの中に最大10分間降水量という項目を見つけてしまいました。ニュースや新聞などでは“10分単位”での数字が報道されることもあまりないので、気にしていなかったのですが

最大 10分間降水量

1位新潟県 室谷  (東蒲原郡)50.0mm/10分2011年 7月26日
2位高知県 清水  (土佐清水市)49.0mm/10分1946年 9月13日
3位宮城県 石巻  (石巻市)40.5mm/10分1983年 7月24日
4位埼玉県 秩父  (秩父市)39.6mm/10分1952年 7月 4日
5位兵庫県 柏原  (柏原市)39.5mm/10分2014年 6月12日

という記録が記されていました。

実はこの数字ですが、筆者にとっては長年不思議に思っていたことが解消できた数字なのです。思いつきラボでも何度か取り挙げている JIS T 8127 高視認性安全服 規格の中の“降雨耐性試験”の試験条件の設定降雨量が 「284mm/時相当」となっていて、日本の最高数値では1時間当たり前述の千葉県 香取 と長崎 長浦岳153mm/hrが1時間あたりの最高値なのに、284mm/hrとは現実離れしていると感じていました。
講演会やセミナーでもよく質問を受けていたのですがずっとうまく説明ができないままでいましたが、やっと納得できたのです。

新潟県 室谷 の10分間の記録が 50mm/10分であれば  1時間あたり 300mm /hr の降雨量ということになります。1時間あたり 284mm の数字はまずありえない数字 でも 10分間の短時間では 1時間あたり 284mm の勢いで降ることは記録からみてもありえるということになります。設定条件が現実離れしていたわけではなかった ことに気が付いたのです。次回の講演からちゃんと説明ができるようになりました。

国内の最高気温の記録

猛暑も続いていますので温度の記録も紹介しておきます。

最高気温
1位 高知県 江川崎 (四万十市) 
41.0℃  2013年 8月12日
2位 埼玉県 熊谷  (熊谷市)  
40.9℃  2007年 8月16日
   岐阜県 多治見 (多治見市) 
40.9℃  2007年 8月16日
4位 山形県 山形  (山形市)  
40.8℃  1933年 7月25日
5位 山梨県 甲府  (甲府市)  
40.7℃  2013年 8月10日

観測所で40℃を超えた地点が現在 18ヶ所あるのですが、そのうち 11地点が 2000年以降に記録したとありました。やはりここ数年温度は上昇しているのが分かります。大雨と猛暑はこれからも続くと考えておいたほうがいいようです。夏本番さらに台風の本格的な季節になります。異常気候にはくれぐれも注意願います。

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一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp

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