2026/05/27
《化学物質のいろは》第31弾 化学物質規制の迷子にならないために/エコテックス®・ブルーサイン・AFIRM RSLを徹底比較
おさえておきたい基礎知識
2026/09/25
日ごとに秋の気配が濃くなり、秋物への衣替えを迎えるこの頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回は、各分野で注目を集めている「鉛」にスポットを当てます。身近な製品や包装など、さまざまな用途で使われてきた「鉛」は、人体や環境への影響が懸念され、国内外でさまざまな規制が設けられています。
最近では、米国CPSC(米国消費者製品安全委員会)関連の規制・試験への関心が高まるほか、欧州のPPWRでも、包装・包装部品中の鉛・カドミウム・水銀・六価クロムの合計濃度に関する規定が適用されるなど、国際的な動向から目が離せません。
今回の《化学物質のいろは》では、そんな「鉛」について、基礎知識と最新の規制動向を分かりやすくご紹介します。

「鉛」は、自然界にも存在し、亜鉛とともに鉱山から多く産出されています。染料/顔料、重り、蓄電池やはんだの原料など身近な金属として広く利用されてきました。近年は、水道管、はんだ、塗料などで鉛を使用しない製品への代替が進んでいます。
鉛の毒性として「急性毒性」「慢性毒性」「発がん性」があげられます。鉛の恐ろしさはその蓄積性にあります。ATSDR(米国毒性物質疾病登録庁)によると、体内に吸収された鉛はその多くが骨や歯に蓄積します。成人では体内の鉛の9割以上が骨などに存在し、数十年にわたり、ゆっくりと体外へ排出されることが分かっています。国際的なリスク評価機関JECFAは、鉛が神経系や造血系などに悪影響を及ぼすことを指摘しており、特に小児などの発達中の神経系は鉛による影響を受けやすいとされています。また、鉛はIARC(国際がん研究機関)により発がん性区分2B(人に対して発がん性があるかもしれない)に分類されています。
昔の電化製品には、鉛を含むはんだが多く使われています。廃棄された電化製品から鉛が溶け出すと、土壌や地下水を汚染するおそれがあります。また、河川や海に流れ込んだ鉛は生態系に影響を及ぼし、食物や飲料水を通じて人の体内に取り込まれる可能性があります。
このような有害性を背景に、鉛は世界各国で規制されています。
乳幼児用玩具における鉛の使用が厳しく制限されています。規制値は材料のカテゴリーによって異なります。例えば、おもちゃの塗膜については、鉛の溶出量を90 μg/gに制限しています。
2026年8月12日から適用されたPPWR(Packaging and Packaging Waste Regulation:包装および包装廃棄物規則)では、鉛を含む4つの重金属について、包装・包装部品中の総含有量を100 mg/kg以下とすることが定められています。本規制はEUにおける包装材及び包装廃棄物に関する規則で、企業には包装設計や材料選択の見直しが求められることから、近年注目されています。
なお、対象となる4物質は以下の通りです。
・鉛(Pb, Lead, CAS:7439-92-1)
・カドミウム(Cd, Cadmium, CAS:7440-43-9)
・水銀(Hg, Mercury, CAS:7439-97-6)
・六価クロム(Cr(VI), Chromium(VI), CAS:18540-29-9)
また、RoHS指令では、電気・電子機器の均質材料中の鉛濃度を0.1 wt%以下に制限しています。
玩具安全規格EN 71-3でも、玩具からの鉛の溶出量が規制されています。規制値は材料のカテゴリーによって異なり、例えば、塗膜からの鉛の溶出量については、23 mg/kg以下とされています。
米国ではCPSIA(Consumer Product Safety Improvement Act:消費者製品安全性改善法)により、子供用玩具・育児用品に含まれる鉛類やフタル酸エステル類を規制しています。対象製品を米国内に販売目的で輸出する場合、CPSC(Consumer Product Safety Commission:米国消費者製品安全委員会)に登録された第三者試験機関による試験が必要です。2026年6月、CPSCは、子ども向け製品等における鉛含有量の規制の見直しを行いました。検討の結果、現行の基準である「子供向け製品:100 ppm以下」「塗料・表面コーティング:90 ppm以下」は、現時点で技術的に達成可能な最も低い水準であるとして、規制値は維持されることとなりました。
CPSIAでは鉛規制値について定期的な見直しが求められており、今後の技術や科学的知見の進展によっては、規制値が見直される可能性もあります。今後の動向に注目が必要です。
エコテックス®では、鉛などの重金属を、汗など皮膚に触れる場合の影響を評価する「溶出重金属試験」と、検体に含まれる重金属の量そのものを評価する「含有重金属試験」の2つの試験方法で管理しています(表1)。これらの重金属の分析には、「誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)」を用いています。試料中の元素をイオン化させ、質量分析計によりイオンのm/z (質量電荷比)におけるイオン化数を測定することで、元素及び濃度を測定します。ICP-MSは高感度な分析が可能で、微量に含まれる重金属まで測定できることが特徴です。試験方法の詳細については「重金属分析」のページをご覧ください。
表 1 OEKO-TEX® STANDARD100「Annex6」規制値表
| 規制物質 | クラス I | クラス II | クラス III | クラス IV |
|---|---|---|---|---|
|
乳幼児用 (36か月未満) |
肌接触大 (肌着等) |
肌接触小 (外衣等) |
装飾用 (インテリア) |
|
| 溶出重金属(mg/kg) | ||||
| 鉛 Pb | 0.2 | 0.2(1,000※) | 0.2(1,000※) | 0.2(1,000※) |
| 含有重金属(mg/kg) | ||||
| 金属製品中の鉛 Pb | 90 | 90(1,000※) | 90(1,000※) | 90(1,000※) |
| 樹脂製品中の鉛 Pb | 75 | 75(1,000※) | 75(1,000※) | 75(1,000※) |
※ガラス素材
※規制の詳細については、OEKO-TEX®RSLをダウンロードしてご確認ください。
エコテックス® 事業部は、2012 年にISO 17025を取得し、認定ラボとしてCPSC に登録されています。米国へ輸出する玩具・育児用品の有害化学物質の安全性確認試験に加え、PPWRへの対応に向けた4物質(鉛、カドミウム、水銀、六価クロム)の分析も実施しています。各種規制や試験についてご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
また、《化学物質のいろは》では、今後取り上げてほしいテーマを募集しています。
「この化学物質について知りたい」「この分析装置の仕組みが気になる」など、今後、取り上げてほしいテーマがございましたら、お気軽にメールでリクエストください!
【有害化学物質に関するお問い合わせ先】
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
ライフ アンド ヘルス事業本部 化学試験事業部
E-mail : oeko-tex@nissenken.or.jp
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