おさえておきたい基礎知識

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〖試験担当者のひとり言〗~ お役立ちな独白28 試験規格に登場する【試験菌】のヒミツ ― 「この菌を使う理由」をちょっと深掘り

2026/10/05

試験報告書の菌名に興味を持ったことはありませんか?

 業界関係者の皆さんは、ニッセンケンの微生物試験や抗菌試験の結果報告書で「黄色ぶどう球菌」や「大腸菌」などの名称を見掛けて、ある種の興味が湧いたことはありませんか?

 JISなどの試験規格では、評価する製品や目的に応じて、使用する微生物が試験菌として定められています。ある試験に対して、無数に存在する微生物の中から、なぜ特定の菌が選ばれるのか、その理由をご存じでしょうか? 今回は、【抗菌試験】と化粧品の【特定微生物試験】の2種類を中心に、「なぜこの菌を使うの?」という視点から、試験菌のヒミツについて紹介していきます。

試験で使う菌は安定した評価ができることが大事

 製品の抗菌性を評価する代表的な試験規格として、繊維製品を対象としたJIS L 1902や、プラスチック、金属、セラミックスなどの抗菌加工製品を対象としたJIS Z 2801があります。JIS L 1902では、黄色ぶどう球菌や肺炎かん菌などが試験菌種として規定されています。一方、JIS Z 2801では、黄色ぶどう球菌と大腸菌の2種類が規定されています。同じ抗菌試験であっても、対象とする製品(素材)が違えば、試験菌も変わります。

 では、なぜこれらの菌が選ばれ、使用されているのでしょうか?

 大きな理由の1つは、その評価試験を安全かつ安定的に実施できるかという点にあります。その菌が、よく知られているもので、単に日常生活に関わりが深というだけではなく、『安全に取り扱えること』や『標準化された菌株を安定して入手できること』が重要なのです。 『一定の条件で、安定して抗菌性を評価するために適している』という観点からも選ばれています。

黄色ぶどう球菌と大腸菌で抗菌性試験を行う理由

 ドラッグストア等の店頭に並んでいる抗菌製品で、「すべての菌に対して効果があるわけではありません」と記載されているのを見たことがある方もいるのではないでしょうか。

 「抗菌」と聞くと、どんな菌にも効果があるように誤解してしまうかもしれません。しかし実際は、細菌にはさまざまな種類があり、すべての菌に対しての抗菌効果を確認するということは現実的ではありません。同様に、わたしたちの抗菌試験も、あらゆる菌を対象に調べることは不可能です。

 前述の通り、JIS Z 2801では、試験菌として黄色ぶどう球菌と大腸菌の2種類を規定しています。では、なぜこの2種類なのでしょうか。試験担当者が的確に解説しましょう (*^^)v

 黄色ぶどう球菌と大腸菌は、それぞれ「グラム陽性菌」と「グラム陰性菌」という異なるグループに分類されます。細胞の構造などが異なるため、薬剤や抗菌成分に対する性質にも違いが生じることがあります。

 例えば、ある抗菌成分が黄色ぶどう球菌には効果を示しても、大腸菌には十分な効果を示さないことがあります。このように、性質の異なる2種類の菌を用いることで、製品の抗菌性を多面的に評価することができます。ただし、すでにお伝えしましたが、黄色ぶどう球菌と大腸菌の両方に効果が確認されたとしても、すべての微生物に対して効果があるという意味ではありません。

 抗菌試験の結果は、「試験に用いた菌に対して、規定された条件で抗菌効果が確認されたもの」と捉えることが大切です。

同じ菌でも、試験によって選定理由が違う

 ここまで紹介したJIS L 1902やJIS Z 2801は、製品が菌の増殖を抑えることができるかを評価する【抗菌試験】の1種です。一方、化粧品などを対象に行う【特定微生物試験】というものがあり、具体的には、製品中に特定の微生物が存在していないことを確認するものとなります。この試験では、抗菌試験でも利用した黄色ぶどう球菌が対象となります。

 特定微生物試験で対象となる微生物としては、黄色ぶどう球菌をはじめ大腸菌、緑膿菌、カンジダ・アルビカンスなどがあります。黄色ぶどう球菌や緑膿菌などは、ヒトの皮膚や眼への感染症を引き起こす可能性があり、製品中に存在することが望ましくないため、試験によって確認することに意義があります。さらに、糞便汚染の指標となる大腸菌については、その検出が製造工程における衛生管理上の問題を示唆する場合があります。

黄色ぶどう球菌を使用する理由
抗菌試験 当該製品に抗菌性があるかを確認すること
特定微生物試験 当該製品に同菌が混入していないかを確認すること

 このように、同じ黄色ぶどう球菌でも、試験の目的によって役割が異なります。抗菌試験では菌の増殖を抑えられるかを評価するための試験菌であり、化粧品の特定微生物試験では、製品中に存在してはいけない微生物が含まれていないかを確認するためのものとなります。

製品や規格ごとにいろいろな試験菌を使用

 試験担当者の解説はいかがだったでしょうか? ご理解いただけましたか? 改めて今回のポイントをまとめてみます。

 ●試験に登場する菌は、たくさんある微生物の中から、試験の目的や方法に応じて選ばれている

 ●試験結果を見る時には、「どの菌を使って、何を評価した試験なのか?」確認することが大切

 ニッセンケンで実施しているいろいろな抗菌試験の方法(規格)と、使用する菌種を下表にまとめてみました。ご参考にしてください。

試験方法 試験菌種
JIS L 1902 繊維製品の抗菌試験 黄色ぶどう球菌、肺炎かん菌
JIS Z 2801 プラスチック製品などの抗菌試験 黄色ぶどう球菌、大腸菌
ISO 4768 抗バイオフィルム製品の評価 表皮ぶどう球菌
JIS K 6400-9 軟質発泡剤の抗菌試験 黄色ぶどう球菌、大腸菌
JIS S 3303 ウェットワイパー類の除菌試験 黄色ぶどう球菌、大腸菌
ISO 11930 化粧品の保存効力試験 緑膿菌、黄色ぶどう球菌、大腸菌、カンジダ、クロコウジカビ

 製品によっては、規格で定められた試験菌だけでなく、実際の使用環境や用途を考慮して、別の試験菌を追加して評価することもお勧めです。例えば、キッチン周りで使用する製品であれば、食品などを介して問題となる可能性があるサルモネラ菌や腸管出血性大腸菌(O157など)を追加しても良いかもしれません。

 もちろん、どの菌を追加するかは、製品の用途や使用環境、想定されるリスクなどによって検討しなければなりません。 試験報告書をご覧になる際、試験菌の名前に少し注目してみると、普段何気なく見ていた試験結果も、少し違って見えてくるかもしれません。また消費者視点でも、試験菌名を気にしながら商品を観察していただけると、ショッピングの楽しさが広がりますね。

微生物試験のご相談について

 バイオケミカルグループでは、さまざまな製品の抗菌・抗ウイルス試験や、消臭・防臭試験などを行っています。「該当する試験規格がなく、評価の進め方が分からない」「どう評価すればいいか分からない」など、評価方法のご相談から対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

【コラム執筆担当】
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
ライフ アンド ヘルス事業本部 バイオケミカルグループ

本コラム「試験担当者のひとり言」は、毎月2回(5日・20日)更新しています。

次回もお楽しみに!

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