2026/08/05
〖試験担当者のひとり言〗~ お役立ちな独白24 エアコンの効いた部屋と蒸し暑い部屋で衣服の『消臭効果』は変わる?
おさえておきたい基礎知識
2026/09/20

夏場、ケーキ屋さんや鮮魚店などで生ものやスイーツを買ったときについてくる「保冷剤」。捨てずについつい冷凍庫にしまい込んで、気が付くとたくさんたまってしまうことはありませんか?
試験担当者は気になって、この保冷剤が「何か使い道はないかな?」と調べてみると、なんと消臭剤や芳香剤として再利用する方法が紹介されていました。保冷剤の中には、高吸水性ポリマーなどを使用したジェル状のものがあります。この高吸水性ポリマーは、市販の消臭剤としても使われているそうで、確かに消臭効果が期待できそうです。

一方で「保冷剤そのものに消臭効果はない」という見解もあるようで、実際に保冷剤を使ってどのくらい臭いが減るのか、測定したデータを探してみましたが、なかなか見つかりません。
それならば、われわれ試験担当者が実際に測ってみよう!ということで、今回、市販の消臭ビーズと保冷剤を使って、臭気がどのくらい減少するのか比較してみました。
保冷剤の消臭効果を分かりやすく明らかにするため、今回は市販の消臭ビーズ型の1製品も併せて試験し、両者の比較を通じて検証を行いました。
設定としては、『4人家族で使用する容積800Lの下駄箱』、『そこに200g程度の消臭剤を設置』するという、一般的な家庭を想定。これをスケールダウンし、実際の試験では「4 Lの臭気ガスに対して、それぞれ約1gの試料(保冷剤及び市販の消臭剤)を置く」という試験条件で比較しました。また臭気成分として、下駄箱などの臭いの原因として知られる代表的な3種類、つまりアンモニア、酢酸、イソ吉草酸を選びました。
試験は、試料1種類ずつと各臭気ガスを同じバッグに入れ、20±2℃(温度)、65±4%RH(湿度)の環境で放置し、臭気濃度がどのくらい減少したかを測定しました。
【試験条件】
| 臭気ガス | 初発濃度 | 測定方法 | 放置時間 | 試料量 |
|---|---|---|---|---|
| アンモニア | 約 100ppm | 検知管法 |
2 時間後、 5 時間後、 24 時間後 |
約 1g |
| 酢酸 | 約 30ppm | 検知管法 | ||
| イソ吉草酸 | 約 20ppm | GC法 |
試料をバッグに入れない、いわゆる「空試験」に対して、保冷剤と消臭剤を入れた場合のそれぞれの減少率(%)は下表の通りです。ここでは臭いの減少率を示しており、数字が大きいほど「臭気成分が減少した」とご認識ください。
【検証結果】
| 臭気ガス | 試料 | 減少率(%) | ||
|---|---|---|---|---|
| 2 時間後 | 5 時間後 | 24 時間後 | ||
| アンモニア | 保冷剤 | 57.8 | 75.2 | 84.8 |
| 消臭ビーズ | 46.6 | 55.4 | 64.2 | |
| 酢酸 | 保冷剤 | 76.0 | 94.9 | >99 |
| 消臭ビーズ | 81.7 | 97.5 | >99 | |
| イソ吉草酸 | 保冷剤 | 69.5 | 93.2 | >99 |
| 消臭ビーズ | 73.8 | 93.4 | >99 | |
今回測定した3種類の臭気については、保冷剤でも比較的高い減少率が確認できました。特に酢酸とイソ吉草酸は、5時間後には90%以上、24時間後には99%以上減少しています。アンモニアについても、24時間後には約85%減少しました。
保冷剤で消臭効果がでる原理を調べてみると、高吸水性ポリマーは水分を保持するだけでなく、臭気成分の性質によっては、臭気成分を取り込むことで臭気を低減することがあるようです。今回使用したアンモニア、酢酸、イソ吉草酸はいずれも水との親和性が比較的高い物質なので、こうした性質が今回の結果につながった可能性があります。
一方で、臭いにはさまざまな種類があり、すべての臭気が同じように減少するとは限りません。例えば、台所で気になる生ごみの臭い。腐ったタマネギやキャベツなどの臭いとして知られるメルカプタン類は、水となじみにくい性質があります。そのため、保冷剤だけでは今回のように高い減少率にはならないかもしれません。食品つながりでもあり、試験担当者としては次の機会にこの説を確認してみたいところです。

消臭ビーズのアンモニアに対する結果では24時間後で減少率は64.2%となり、保冷剤より低い結果となりました。ただし、アンモニアの消臭に対しては保冷剤のほうが優れていると一概に言えるものではなく、消臭ビーズは消臭成分の量や表面積などの工夫で十分な消臭効果を持続的に得られるように設計されていると考えられます。そのため、消臭の速度が比較的ゆるやかだった可能性もあります。消臭効果の持続性を比較してみるのも面白そうですね。
今回の検証で明らかになりましたが、保冷剤には高吸水性ポリマーの保冷剤でアンモニア・酢酸・イソ吉草酸に対する消臭効果が期待できそうです。冷凍庫に埋もれている保冷剤の使い道の1つとして、ぜひご検討ください。
バイオケミカルグループでは、さまざまな製品の抗菌・抗ウイルス試験や、消臭・防臭試験などを行っています。「該当する試験規格がなく、評価の進め方が分からない」「どう評価すればいいか分からない」など、評価方法のご相談から対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
【コラム執筆担当】
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
ライフ アンド ヘルス事業本部 バイオケミカルグループ
本コラム「試験担当者のひとり言」は、毎月2回(5日・20日)更新しています。
次回もお楽しみに!
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