2025/01/24
■COLUMN 〖試験担当者のひとり言〗
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おさえておきたい基礎知識
2025/10/25
日ごとに秋も深まり、朝夕の風に冬の気配を感じる季節となりました。繊維・アパレル業界では、冬物衣類の出荷が本格化し、保温性はもちろん、肌触りや着心地の良さも一層重視される時期です。こうした衣類の快適さを支えているのが、繊維製品の仕上げ工程で柔軟剤として使用される「シロキサン」です。
シロキサンは、繊維製品の柔軟仕上げ剤のほか、化粧品、医療用品、電子部品、日用品など、さまざまな分野で活用されています。これまで主に環状シロキサンの有害性が問題視され、EUを中心に規制が進められてきましたが、2025年6月には、新たに非環状シロキサン2物質がREACH規則のSVHC(高懸念物質)に追加されました。この動きを受けて、エコテックス®認証規格でも、2025年10月よりこれらのシロキサンを新たに規制対象に加えました。今回の《化学物質のいろは》では、シロキサンの基礎知識から最新の規制動向までを、わかりやすく解説します。
シロキサン(Siloxane)とは、ケイ素(Si)と酸素(O)が交互に結合した「Si-O-Si」構造を持つ、有機ケイ素化合物の総称です。分子構造の違いにより、大きく2種類に分類され(表1)、それぞれ揮発性や安定性などの性質が異なるため、用途に応じて使い分けられています。
表1:環状シロキサンと直鎖状・分岐鎖状シロキサン

シロキサンは、その柔軟性、撥水性、電気絶縁性、耐熱性などの特性から、さまざまな分野で利用されています。化粧品では、ファンデーションや日焼け止め、ヘアケア製品などに多く使用され、さらさらとした感触や保湿性、耐水性などを付与します。また繊維製品では、衣料品をはじめ、アウトドア用品やインテリア製品など幅広いアイテムに応用されており、柔軟性の付与、撥水・防汚効果、静電気防止、耐久性の向上など、快適性と機能性の両面で重要な役割を果たしています。
一方で、シロキサンの中には、人の健康や環境への影響が懸念されている物質もあります。EUを中心に注目されている主な有害性は、以下のとおりです。
▶ 生殖毒性
一部のシロキサン(例:D4)は、動物実験において生殖能力への悪影響が報告されています。
▶ 難分解性・高蓄積性(PBT/vPvB)
一部のシロキサンは環境中で分解されにくく、生物体内に蓄積しやすいとされています。
※PBT:難分解性(Persistent)、高蓄積性(Bioaccumulative)、高毒性(Toxic)を持つ化学物質のこと。
※vPvB:非常に難分解性(very Persistent)かつ非常に高蓄積性(very Bioaccumulative)な化学物質のこと。
▶ 揮発性による大気放出の懸念
D4、D5、D6などの環状シロキサンは揮発性が高く、大気中に放出・拡散しやすいことが問題視
されています。
▶ EU
2025年6月、REACH規則のSVHCに、新たに2種類のシロキサンが追加されました。今回の追加に
より、現在SVHCに指定されているシロキサンは表2のとおりです。
表2:REACH規則SVHC指定シロキサン

また、D4・D5・D6について、2024年6月にREACH規則が改訂されました。これにより、2026年
6月6日以降、これらの物質が0.1重量%以上含まれている製品は、EU市場での販売が原則禁止とな
ります(※一部の用途には例外や猶予期間があります)。
▶日本
日本では、化学物質審査規制法(化審法)において、D4およびD6が「監視化学物質」に指定され
ています。現時点では、使用の禁止や制限などの規制は設けられていませんが、今後のリスク評価
の結果によっては、規制が強化される可能性があります。
エコテックス®では、REACH規則の最新動向をいち早く反映しており、今回SVHCに新たに追加されたL4およびM3Tについても、2025年10月から対応を開始しました。これにより、エコテックス®は、これら新規SVHCを含むすべてのSVCH指定シロキサンに対応済みです(表3)。
表3:エコテックス®STANDARD 100 「Annex4」、「Annex6」規制値表

従来、エコテックス®の規制物質の見直しは年1回(4月)実施していましたが、近年は、SVHCへの追加をはじめとする世界的な規制動向の変化に、より迅速に対応できる体制へと進化しています。
また、ニッセンケンでは、これらのシロキサンについて個別に定量分析が可能です。製品中の含有量を事前に把握したい場合は、お気軽にご相談ください。
今回、新たにSVHCに直鎖状および分岐鎖状のシロキサンが追加されたことで、規制の範囲が広がり、企業にとっては品質管理の負担が増すことになります。EUを中心に化学物質の規制がますます厳しくなっている現状において、エコテックス®認証の取得が、グローバル市場に対応した品質管理の手段となるのは大きなポイントです。
また、ニッセンケンではエコテックス®認証を取得しない場合でも、RSL(制限物質リスト)にエコテックス®の基準を取り入れるサポートサービスを提供しています。詳しくは《化学物質のいろは》第22弾を併せてご覧ください。
さらに、2025年9月29日よりInstagramにて「@nissenken_life_and_health」というアカウントでの情報発信をスタートしました!エコテックス®の最新情報だけでなく、環境配慮に関する情報や生活に関する豆知識、さらに試験の様子など、多彩なコンテンツを分かりやすくお届けしていきます。 ぜひフォローして、Instagramの発信にもご注目ください!!
【有害化学物質に関するお問い合わせ先】
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
ライフ アンド ヘルス事業本部 化学試験事業部
E-mail : oeko-tex@nissenken.or.jp
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