2024/04/01
第63回 : 「テキスタイルの寸法安定性」
アパレル散歩道
2022/08/01
2022.8.1
PDF版をご希望の方はダウンロードフォームへお進みください > ニッセンケンウェブサイト ダウンロードサービス【アパレル散歩道No.43】
前回までのアパレル散歩道では、「ものつくり」の視点から、材料や縫製について勉強してきました。今回の第43回アパレル散歩道では、アパレル製品のメンテナンスとして「商業洗濯」を取り挙げます。
「商業洗濯」とは、クリーニング店で実施する洗濯処理です。われわれ消費者は、クリーニング店の受付に洗濯物を持って行き洗濯処理を依頼するわけですが、その後のクリーニング店での洗濯処理内容について、明確に理解できていないケースも多いと思います。お店の奥に設置しているクリーニング機で処理されたり、洗濯工場に搬送後、まとめて洗濯処理されているケースもあります。
今回のアパレル散歩道では、「商業洗濯」の概要を紹介します。
分類 | 説明 |
---|---|
ランドリー | クリーニング店で行う機械による温水洗い |
ウエットクリーニング | クリーニング店で行う特殊な技術によるマイルドな水洗い |
ドライクリーニング | クリーニング店で行う有機溶剤によるクリーニング |
コインランドリー | コインランドリー業者が街中に設置した洗濯設備を使用して消費者が行うランドリー |
図1 ランドリー機の例
工程 | 説明 | |
---|---|---|
1 | 洗い | 専用の大型ドラム型洗濯機を使用する。また、洗浄力向上剤として、アルカリ剤(メタケイ酸ソーダ)などを加える。40℃~60℃の温水を使用する |
2 | 漂白 | 過炭酸ナトリウムや過酸化水素水などが使用される |
3 | すすぎ | 大量の水で数回行われる |
4 | 糊つけ | コーンスターチやタピオカ澱粉などの天然糊、ポリ酢酸ビニル、PVA(ポリビニルアルコール)、CMC(カルボキシメチルセルロース)などの合成糊が使用される |
5 | 脱水 | 遠心脱水機で脱水される |
6 | 乾燥 | 一般にワイシャツは乾燥させず、アイロンやプレス機で濡れ掛けが行われる |
7 | 仕上げ シミ落とし | しわや型くずれをプレス機で修正する。落ちきれなかったシミを除去する。本工程は洗い前に実施することもある。シミ落としは前処理で行われる場合もある |
図2 乾燥機の例
図3 シミ落とし工程の例
ウエットクリーニングされるケース | 対象商品など |
---|---|
①一般にドライクリーニング処理されるが、水溶性汚れを除去したい場合 | ウールスーツやウールコート、シルクドレスやシルクブラウスなど |
②ドライクリーニングができない商品で、顔料プリントなどが施されている場合 | 顔料プリントが施された綿入りジャケットなど |
③もともと水洗いはできるが、洗濯時の機械によるダメージを抑えたい場合 | ダウンジャケット、レーヨン使いジャケット、オパール加工ドレス、破損しやすい付属がある商品など |
ウエットクリーニングはできない | ウエットクリーニング処理ができる (通常の処理) | ウエットクリーニング処理ができる (弱い処理) | ウエットクリーニング処理ができる (非常に弱い処理) |
図5 ドライクリーニング機の例
石油系 | パークロロエチレン | フッ素系 | |
---|---|---|---|
油脂溶解力(KB値) 油汚れの落ちやすさ | 25~40 中弱~中 | 90 強 | 13~34 弱~中弱 |
比重 | 0.75~0.85 | 1.62 | 1.27~1.55 |
沸点(℃) 乾きやすさ | 150~210 乾きにくい | 121.2 乾きやすい | 40.2~54 極めて乾きやすい |
素材や染色に対する影響 | 小さい | 大きい | 小さい(アクリル樹脂など一部素材に特異性あり) |
許容濃度(ppm) 毒性 | 500 小さい | 25 大きい | 50~1000 やや大~小 |
環境への影響 | 中程度 | 排気・排水した場合大きい | 排気・排水した場合 中程度 |
引火性 | 引火点 38℃以上 | なし | なし |
その他 | ・建築基準法規制 ・化学やけどのリスク | ・水質、土壌汚染問題 | ・洗浄力にやや難があるものがある ・規制、廃止など将来性が不透明 |
ドライクリーニング処理ができない | パークロロエチレン及び記号Ⓕの欄に規定の溶剤でのドライクリーニング処理ができる。 通常の処理 | パークロロエチレン及び記号Ⓕの欄に規定の溶剤でのドライクリーニング処理ができる。 弱い処理 | 石油系溶剤(蒸留温度150~210℃、引火点38℃~)でのドライクリーニング処理ができる。 通常の処理 | 石油系溶剤(蒸留温度150~210℃、引火点38℃~)でのドライクリーニング処理ができる。 弱い処理 |
図7 わが国のドライクリーニング溶剤の普及率
図8 コインランドリー設備の例
図9 ドライクリーニング表示
(パークロロエチレン)
図10 スパンコールの硬化した事故
図11 フェルト化のメカニズム
図13 スキーウエアのはっ水性低下の例
図14 襟の芯地の縮みにより表地がたるんだ事故
コラム : アパレル散歩道44
~魅力ある商品を開発するために~
テーマ : ものつくり原点回帰シリーズ ~品質基準、品質試験の考え方~
発行元
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター 事業推進室 マーケティンググループ
E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp URL:https://nissenken.or.jp
※当コラムの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
Profile : 清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)
43年間株式会社デサントに勤務し、各種スポーツウェアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業。趣味は27年間続けているマラソンで、これまで296回の大会に参加。
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