アパレル散歩道

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第25回 : 品質改善の話

2021/09/01

アパレル散歩道 繊維製品の品質事故はなぜなくならないのか

2021.9.1

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 社内で品質管理を担当していて、品質改善を生地商社や素材メーカーにお願いするとき、「この項目を改善してください」、「なんとか改善して」と抽象的に要望するだけでは、改善がスムーズにいかない場合があります。また、改善項目によって対策は異なるはずで、できるだけ具体的に、お願いすることが必要です。  今回は、いくつかの品質改善シーンを想定して、改善の手法を紹介していきます。

  1. 品質改善のタイミングについて
     ものつくりの工程には、試作段階、展示会段階、本生産段階があります。同じ内容の現象を改善するにしても、それがどの段階かによって、対策は異なるはずです。表1.は、各段階別に改善を要する現象例を、ピックアップしました。本コラムでは、個別に説明を加えていきます。

    表1. 各段階別に改善を要する事例

    段階改善を要する現象例
    試作 材料 引裂き強さが弱い
    スラックスを履くときつい
    製品 縫製仕様で、かん止めによる補強がない
    モノフィラメント縫い糸が使用されている
    展示会 材料 汗・耐光堅ろう度が低い
    洗濯堅ろう度が低い
    展示会サンプルが黄ばんできた
    製品 シームパッカリングがきつい
    地糸切れが見られる
    フード紐が長い
    本生産 材料 袖だけ色が微妙に異なる
    はっ水加工が弱いものがある
    製品 表示ラベルで誤ったものが付いていた
    刺繍糸の色が違っている
    ステッチが蛇行している

  2.  

  3. 個別の品質改善対策について
    以下に表1.の①から⑮について、説明を加えます。

    ①引裂き強さが弱い
     引裂き強さは、引張り強さとは破断メカニズムが異なります。引張り強さは、糸の長さ方向の引張りが破断の要因になるのに対して、引裂き強さは糸の長さ方向に対して直角に働くせん断が破断の要因になります。ちょうど紙を破るようなイメージです。したがって、引張り強さが全く問題なくても、引裂き強さが弱い素材は結構  あることをご承知ください。引裂き強さは、合成繊維であっても、経糸・緯糸の自由度が低くなると、一気に強度が低下します。樹脂加工して硬くしたり、熱ローラーでカレンダー加工などをすると、生地がペーパーライクになり、引裂き強さが低下します。また、経糸がポリエステル糸、緯糸がレーヨン糸の交織織物などでは、そもそも緯糸のレーヨン糸が強度的に弱いため、たて方向の引裂き強さが低いことが予想されます。
     今回は、試作織物の試験データを見た時、一般的な引裂き強さ基準に比べて、数値が低いケースを想定しています。改善の判断要素は、
    a.製品はどのような使用用途か
    b.パンツ仕様もあるか
    c.引裂き強さの値は基準値と比べてかけ離れているか
    などとなります。試作段階であれば、通常、本生産までに生地調達が間に合えば良いので、まず糸種や織密度など生地規格を変更し別生機を検討する、また仕上げ方法の変更も検討してください。また、改善の程度によりますが、柔軟加工で糸の自由度を上げて引裂き強さを改善することも可能ですが、逆に組織糸滑脱(生地スリップ)が大きくなる可能性があり、この点は改めて滑脱試験でご確認ください。わずかに基準を下回っているときには、先のa.b.を考慮しながら、「上物限定で使用する」、「パターンを拡げる」、「着用評価をへて特別採用※する」ことも可能と考えます。
    (※:特別採用の運用は、個々の企業の運用ルールに従ってください。)

    ②スラックスを履くときつい
     試作段階で、適正サイズの方が織物スラックスを試着したときに、サイズがきついことがあります。改善方法としては、a.パターンを再検討するb.伸縮素材を採用する、などが考えられます。b.の伸縮素材について説明します。生機(きばた)から素材開発する場合、経糸の準備に時間がかかることがありますのでご注意ください。 表2.は、伸縮素材の分類です。

    表2. 伸縮素材の分類

    伸縮素材の種類特徴
    1ニット素材ニットは構造的に伸びに優れている。また、タテ編生地は織物とヨコ編みの中間的な伸び物性を示す。
    2加工糸混用素材加工糸とは、合繊糸に捲縮を付与した糸である。
    捲縮によって、伸縮性の糸が発現する。伸縮性に優れた加工糸を使用することで、織物の伸縮性を高める。俗に、メカニカルストレッチと呼ばれる。もちろん、加工糸はニット素材にも使用されている。  例:トレーニングジャージなど
    3ポリウレタン(Pu)糸混用素材Pu糸を綿や毛など他の繊維で包んだ糸はCSY(コアスパンヤーン)と呼ばれる。この糸を織物の経糸か緯糸、あるいは両方に採用すると、ストレッチ織物となる。一方方向のものをワンウェイストレッチ、経緯両方向をツーウェイストレッチと 呼ぶ。よりフィット性が必要な衣料品に使用される。


    ③縫製仕様で、かん止めによる補強がない

    スラックス 脇ポケット下部のかん止め
    図1. スラックス
    脇ポケット下部のかん止め

     かん止めとは、縫い目がほどけやすい部位やポケットなどの開口部を補強するための止め縫いのことです。図1は、スラックス脇ポケット下部のかん止めの例です。今回の事例では、かん止め自体がされていなかったケースを想定していますが、かん止め位置が下過ぎた場合も同様の破損が発生することになります。試作段階や展示会段階のサンプルチェックでこれらを発見したら、商品設計部門にフィードバックして、改善を確実に実現してください。縫製仕様の可否は、外観チェックだけではわからないこともあり、着用試験を取り入れてチェックすると、色々な課題が見えてきます。


    ④モノフィラメント縫い糸が使用されている
     皮膚刺激など製品安全上、考慮しなければならない検討事項です。モノフィラメント仕様が全て不可というわけではありませんが、
    a.着用時に皮膚と擦れない使い方か
    b.洗濯や着用でフィラメント端が製品表面に飛び出してこないか
    c.モノフィラメントの代替えはないのか

    モノフィラメント糸の飛び出し
    図2.モノフィラメント糸の飛び出し

    などを総合的に検討お願いします。繊維直径が30μmを超えると、皮膚刺激を感じやすくなるといわれていますが、各アパレルメーカーでは、独自のルールを作成し運用されているのが実態です。皮膚障害のリスクとモノフィラメント使いのメリットを試作段階でじっかり見極めたうえで、仕様決定をお願いします。私のこれまでの経験では、モノフィラメントは極力使用しないことをお勧めします。皮膚とは擦れないと確認して使用したモノフィラメントが、洗濯や着用の揉み作用で、糸端が生地から飛び出して皮膚を刺激することがありました。

    ⑤汗・日光堅ろう度が低い
     染色堅ろう度には、表3のように数々の試験方法がJIS(日本産業規格)で決められています。これは、取りも直さず、繊維製品が数々の要因によって、変退色や汚染が生じやすいことを示しています。特に、綿やレーヨンなどセルロース繊維製品は、使用する反応性染料などの特性上、色関連の事故リスクは合繊に比較すると高くなっています。この汗・日光堅ろう度も、このセルロース繊維製品だけに発生する課題です。

    表3. 染色に関するJIS規格例

    JIS規格 試験方法
    JIS L 0842紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅ろう度度試験
    JIS L 0844洗濯に対する染色堅ろう度度試験
    JIS L 0848汗に対する染色堅ろう度度試験
    JIS L 0849摩擦に対する染色堅ろう度度試験
    JIS L 0860ドライクリーニングに対する染色堅ろう度度試験
    JIS L 0846水に対する染色堅ろう度度試験
    JIS L 0888光及び汗に対する染色堅ろう度度試験
    JIS L 0884塩素処理水に対する染色堅ろう度度試験
    JIS L 0855窒素酸化物に対する染色堅ろう度度試験
    JIS L 0845昇華に対する染色堅ろう度度試験


     染料の紫外線に対する耐久性は、染料の化学構造で決定されます。したがって、日光単独や汗と日光との複合による変退色の改善は、最初のレサイプ(染料配合)で決定されます。
     綿などのゴルフシャツや作業服などで、屋外で汗をかいて日光に長時間曝される衣料では、品質基準に汗・耐光堅ろう度が設定されるべきで、最初のビーカー染め(試染め)でも、汗・耐光堅ろう度を考慮したレサイプをお願いしなければなりません。アパレルメーカーや商社が、素材メーカーや染色加工場にビーカー染めをお願いする場合は、はっきりと品質基準を示して、汗・耐光堅ろう度に対応したレサイプを作成してもらう必要があります。スポーツ用綿素材では、JIS L0888 B法(ATTS汗液使用)で、少なくとも3級は欲しいところです。ATTS汗液とは、繊維アパレル業界の繊維製品技術研究会が考案した人工汗液で、変色のもとになる乳酸成分を含み、JIS汗液より実用性が高いといわれています。
     また、汗・耐光堅ろう度を考慮したレサイプは、時として「色目が鮮やかでない、くすんでいる」などの指摘もありますが、これは、商品企画・デザイナー部門とよく相談の上、色目と品質の落としどころを検討してください。

    ⑥洗濯堅ろう度が低い
     セルロース素材の染色では、繊維に未反応の染料が繊維表面に残留し、これが脱落することが洗濯堅ろう度の低さの原因になります。染色工程では、染色後にソーピングと呼ばれる洗浄工程があり、ここで未反応の染料が除去され、洗濯堅ろう度が向上します。試作生地や展示会生地は、サンプル用染色機で少量の生地を染色したり、またサンプル納期の関係で、適正な加工やソーピングが実施されていないケースもあります。したがって、黙っていても本生産では、洗濯堅ろう度は改善されるケースもありますが、少なくとも試作、展示会見本レベルで洗濯堅ろう度不良のデータが見つかれば、素材メーカーには、その不良情報を伝えて、確実に本生産では改善してもらうことが大切です。
     分散染料を用いる通常のポリエステル素材の染色について少し説明します。分散染料は、他の染料とは異なりポリエステル繊維と化学的に結合せず、染料は染色時に高温高圧で無理やり繊維内に押し込まれ、繊維内に分散しているため、「分散染料」と呼ばれています。ちょうど、「お餅に指先で豆を押し込む」イメージです。このため、生地仕上げや縫製工程の加熱作用によって分散染料がマイグレーション(熱移動)して、生地表面に移動し残留することがあります。
     ポリエステル素材のソーピングでは、還元剤を用いて分散染料を除去し、洗濯堅ろう度や昇華堅ろう度、さらに乾摩擦堅ろう度が向上されます。このソーピングを還元洗浄(Reduction Cleaning : RC)と呼んでいます。
     ポリウレタン混用素材では、ポリウレタン糸は基本的には染まりません。染料がポリウレタン繊維を汚染し、その結果、洗濯などの湿潤堅ろう度が低下することがあります。ポリウレタン糸が一時的な染料の保管庫状態になっていると言えます。生地の色濃度や配色を十分検討する必要があります。
     ナイロン素材は、酸性染料で染められますが、一般に洗濯や汗や水堅ろう度など、いわゆる湿潤堅ろう度が弱い傾向があります。染色加工時にソーピング強化とフィックス剤を併用することにより、染色堅ろう度が改善されます。フィックスとは固着するという意味で、化学的に染料と繊維の結合を補強しています。

    ⑦展示会サンプルが黄ばんできた
     白色や淡色の生地で作った試作品や展示会サンプルを保管や展示していたら、黄ばんできたという事故が時々発生します。繊維製品の黄変の原因には、太陽の紫外線、自動車やファンヒーターから出る排気ガス(窒素酸化物)、アイロンなどの熱、洗濯用の漂白剤、人体からの汗などの影響がありますが、近年では、窒素酸化物とポリ袋が関連する事故が増えています。また、ナイロンや絹など素材特性に起因する黄変事故も発生しています。

    a. 窒素酸化物(NOx)とBHTの複合作用
     BHT(ブチルヒドロキシトルエン)は、プラスチックなどの酸化による劣化を防止する酸化防止剤で、衣料品を入れるポリ袋やゴム製品、接着剤などに幅広く使用されています。倉庫や店頭で、自動車の排気ガスやファンヒーター排ガスに含まれる窒素酸化物とポリ袋に含まれるBHTが化学反応し黄変物質が生成し、これが製品に付着しレモン色の黄変が発生するものです。このBHT-NOx黄変は、衣料が置かれた環境とポリ袋に起因するものですから、事故発生は繊維の種類を問いません。BHTを多く含むポリ袋はポリプロピレン製やポリエチレン製が多いようです。このタイプの黄変の再現は、コートルズ黄変試験で可能です。
     本生産を踏まえた改善策としては、BHTを過度に含まないポリ袋を選定する、商品保管倉庫内の窒素酸化物濃度をできるだけ下げることなどが考えられます。倉庫内のフォークリフトを電動式に変更するなどもよい対策と思います。また、保管中は商品の密閉性を高めることも大切となります。

    b. 繊維基質に起因する黄変
     絹やウール、また合繊のナイロンは、その繊維の高分子の構造にアミノ基を有しています。これらが空気中の窒素酸化物の作用により化学変化して、黄変物質が生成し繊維自体が黄ばむことがあります。これらの再現試験としては、ザルツマン試薬による発色試験やJIS L 0855窒素酸化物に対する染色堅ろう度試験などがあります。
     我々は、生地の色目を決定するにあたり、絹やウールなどのたんぱく質繊維、そして合繊のナイロン素材では、基本的に「ちょっと黄ばみやすい素材」であることを理解し、生地の白度を過度に求めないことが重要となります。ウールやナイロンのスーパーホワイトカラーは、見た目には魅力ある色彩ですが、黄変リスクが高いことをご承知ください。

    ⑧シームパッカリングがきつい
     展示会サンプルをチェックしていると、織物製品で、縫製部分の波打ちがきつい商品を見かけます。このシームパッカリングがきついと、商品価値が下がり、売り上げにも大きな影響を与えるでしょう。まずは、仕入先や縫製工場に、その旨を伝えて改善を要望してください。

    シームパッカリング外観
    図3.シームパッカリング外観

     原因には、
    ①ミシンの送り機構
    ②縫い糸張力
    ③縫い糸特性
    ④生地の伸縮
    などいくつかの要因が考えられます。
     また、縫製後のアイロンやプレス仕上げで波打ちをある程度補正することは可能ですが、消費者が洗濯をしたらこの波打ちが顕在化することもあります。補正は万能ではないことを理解してください。近年、生地素材の多様化により、縫製上の難素材が増えているのは間違いありません。

    ⑨地糸切れが見られる
     展示会サンプルは、通常本生産を想定して生産予定の縫製工場で試作されます。しかし、その縫製工場でも、サンプルルームやサンプルラインで生産されることが多いのです。サンプルチェックで、地糸切れが発見されると、商社や縫製工場に改善を要望してください。後日、本生産の承認見本が上がってきたとき、改めて地糸切れの有無を確認することと、工場検査での全数検査で地糸切れをチェックしていただきたいと思います。

    ⑩子ども用スウェットパンツのウェストひもが長い
     子ども用の衣料のひも仕様は、JIS L 4129「子ども用衣料に付属するひもの要求事項」で規格化されています。規格では、ウェストひもの自由端は解放時に140mm以下、着用を想定し適正サイズまで絞った時に280mmとなっています。サンプルチェックで、ひもの長さを測定し、その長さが規格外であった時、縫製仕様自体が誤っていたのか、あるいは縫製仕様は正しくて生産工場が勘違いして長くカットしたのか、確認の上、本生産に向けて改善指示を発する必要があります。子ども服のひも仕様は、子ども達の生活上の安全確保には不可欠な規格です。
    仕様ミスは、時として全品不良や全数返品になりかねませんので、十分ご注意下さい。

    1. 本生産段階
       ここからは、本生産段階での改善事例を紹介します。本生産段階でのトラブルとなると、使用予定の生地は全反工場に投入されており、縫製工場ラインも停止する可能性があるということで、トラブルの内容によっては、大きなリスクが伴います。

      ⑪袖だけ色が微妙に異なる
       無地のジャケットなどで、片袖だけが他の部位に比べて、色目が薄いなどの事例です。グレー色やベイジ色、モスグリーン色など、淡色の配合色の素材に発生しやすいようです。色目がばらつく(ぶれる)要因には、
      a.染色ロットのばらつき
      b.反内の中希、エンディングによるばらつき
      c. 生地裁断の方向性(立毛素材など)
      などがあります。近年、液流染色機の登場で、bの要因は少なくなったようです。通常、染色ロットが異なる生地では、ある程度色差がばらつくことは避けられず、裁断時に異なるロットの生地が混入しないようにパーツ管理をしっかりしなければなりません。
       縫製終了後に色違いが発見されると補修が難しいケースが多く、現品での改善は難しく、全品の色違い発生状況(色差の程度と数量)を確認しつつ、営業判断をしていただくことになります。また、今後の対策のために、縫製工場での受け入れ検反による色目管理の強化を実施し、未然に事故を防止する対策が望まれます。

      ⑫はっ水加工が弱いものがある
       ウインドブレーカー、ブルゾンなどでは、生地にはっ水加工が施されているものがあります。はっ水加工は、染色仕上げ時に、生地に水性や油性のはっ水樹脂を加工し、その後のベーキング(熱処理)によって、はっ水性を付与するものです。
       このような製品の本生産で、使用後すぐにはっ水性が低下したり、はっ水性がない商品が発見されることがあります。製品や生地に水滴を滴下するだけで、はっ水の程度は調べることができます。原因は、加工工程でのはっ水剤調合やベーキング条件や再加工などの要因が多いようです。まず、全ロットの調査で、発生状況(はっ水低下の発生は全品か一部か、色間で差はないか)などを確認することが大切で、機能ラベルで「はっ水」を表示しているかの確認も大切です。製品で再はっ水加工を実施する場合は、製品検査会社やクリーニング業者での再はっ水加工処理を一度試して、はっ水の耐久性、染色性、外観変化、品位などを総合的に判断していただくことが重要です。

      ⑬表示ラベルで誤ったものが付いていた
       製品の表示物には、縫い付けラベルや下げ札、紙状の取り扱い説明書などがあります。承認見本や店頭でラベル取り付けミスが発見されれば、すみやかにラベルの交換が必要です。縫い付けラベルは、残念ながら取り外しが必要になります。縫製仕様書に間違いがない限り、縫製工場でのラベルなどの副資材の管理の徹底を徹底的に要請しなければなりません。

      ⑭刺繍糸の色が違っている
       まれに縫製仕様書で指示した刺繍などの配色が違うことがあります。基本的には、縫製工場での管理問題です。
      縫製仕様書は、ものつくりの設計図です。材料調達担当部門、製造担当部門、検査担当部門がこれを遵守して、初めて正常品が完成します。縫製工場の管理の精度を上げることが喫緊の課題といえるでしょう。刺繡糸の付け替えは、まず糸の取り外しの時点で、運針数の多少、生地の傷み具合で可否が決定しますので、個別の確認が必要です。

      ⑮ステッチが蛇行している
       縫製品の検査項目に、ステッチの蛇行などがあります。また、蛇行だけでなく、縫い外れ、目飛び、糸始末不良などもすべて、縫製品の品位に直結しますね。直接の原因は、ミシン調整不備、オペレーターの未熟などがありますが、ある程度の発生は予測して、縫製完了後の出荷検査でそれらの不良を確実に抽出し、確実に補修されていることが優れた工場といえます。縫い直しは、素材の特性で「針穴があく」などの理由で難しいケースもありますが、個々に対応していただければと思います。


発行元
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター 事業推進室 マーケティンググループ
E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp URL:https://nissenken.or.jp

※当コラムの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。


Profile : 清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)

清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)

43年間株式会社デサントに勤務し、各種スポーツウェアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業。趣味は27年間続けているマラソンで、これまで296回の大会に参加。 社外経歴 (一財)日本繊維製品消費科学会 元副会長 日本繊維技術士センター理事 技術士(繊維) 文部科学省大学間連携共同教育事業評価委員 日本衣料管理協会理事 TES会西日本支部代表幹事

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