2020/08/15
第1回 : 自己紹介とこれからのコラム概要
アパレル散歩道
2021/08/15
2021.8.15
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今回は、「繊維・アパレル製品の用語」です。特に、生産工程である縫製関係の用語を取り上げます。
縫製は、世界のみならず日本においても、長い歴史を持っています。したがって、そこで使用される業界用語も古い言葉や新しい言葉など、色々混在しています。今回は、比較的アパレルビジネスの現場でよく使われる言葉を紹介します。また、実際の縫製現場を見学されると、より理解度が深まります。
用語 | 意味 |
---|---|
本縫い | 上糸が下糸を収めたボビンの周囲を回って、上糸と下糸の絡み合いを構成している。ほつれにくく確実につなぎ合わせるので最も広く利用される。伸びが少ないので、主に織物用途で使用され、ニットの縫製には適さない。 |
環縫い | 生地の表面から縫い糸を差し込み、連鎖的に絡み合いを構成する縫い方式。本縫いと異なり、縫い目方向に伸びやすく、ニットの縫製に適している。 |
単環縫い | 環縫いのひとつ。糸のループに同じ糸のループが通ることによりステッチが形成される。下糸はルーパーで供給されボビンは不要である。セーターのリンキングやスカートのすくい縫いなどに使用される。欠点としてはほどけやすいことがある。 |
二重環縫い | 環縫いのひとつ。二種類以上の糸を使い、これらの糸が他糸ルーピング(糸のループに他の糸のループが通る)してステッチが形成される。ボビンを使用しないので、生産効率が良い。 |
偏平縫い | 環縫いのひとつ。フラット縫い、フラットロックともいう。複数枚の布を重ね、縫い代が目立たないように上下の布端を被覆している。 |
縁かがり縫い | 環縫いのひとつ。布地の端を切りそろえながら布地の端を縫い目に包み込み、縫い合わせている。オーバーロックともいう。 |
溶着・接着 | ミシン糸を使用せず、接着剤を使用し、熱プレスや超音波接着機などを用いて生地を接合する方式のこと。重ね合わせ方式や突き合わせ方式などがある。 |
千鳥縫い | 一針ごとに方向が変わる縫い目を形成した縫い方で、生地の伸びに 追従できる。一針ごとに角度が変わる千鳥縫いを俗に一点千鳥と呼ぶ。 |
ボタン穴かがり縫い | ボタン穴の周囲がほつれないようにかがり縫いすること。 |
閂(かんぬき)縫い 閂(かん)止め縫い | 縫い目がほどけやすい部位やポケットなどの開口部を補強するための止め縫いのこと。閂(かん)止めとも呼ばれる。 |
すくい縫い | 生地の表面に縫い目が現わさないように、その生地の厚みの間をすくうように縫うこと。 |
安全縫い | オーバーロック縫い目の横に、二重環縫い目が構成される複合縫い目のこと。非常に強度があり、ワーキングウェアーやジーンズなど、ハード用途の布帛衣料に使われる。インターロックともいう。 |
返し縫い | ミシンの返し縫い装置を使って後進縫いをおこない、糸のほつれを防ぐ縫い方。 |
ギャザリング | ギャザーともいう。布地を縫い縮めて、波型のひだをつくること。 |
シャーリング | 一定の間隔をおいて、2本以上の縫い目で不規則な波型のひだをつくること。 |
ピンタック | ピンのように細く縫ったタックのことで、布地の折り山のきわを縫うこと。 |
ハ刺し縫い | 襟裏などに芯地を縫い付ける縫い方。 |
キルティング | 布の間にわたなどを挟んで、そのわたが動かないように縫うこと。 |
裁ち目かがり | 布地のほつれを防ぐために、ジグザク縫いやオーバーロックなどで裁ち目をかがること。 |
三つ巻縫い | 三つ巻押さえを用いて、布地の端を三つ折りにしながら、縫いとめること。 写真は三つ巻押さえの一例。 |
地縫い | 二枚の生地を中表に合わせ、縫い合わせること。 |
飾りミシン | 表に出る縫い目線が、飾りとして用いられる縫い方。 |
捨てミシン | 縫い代の始末の一種で、縫い代を折らずに、裁ち目のきわを縫うこと。 |
袋縫い | 縫い代の始末の一種で、二枚の布地を外表に合わせて縫い止めしたのち、裏返して裁ち目を中に包むようにして縫い合わせること。 |
伏縫い | 縫い代の押さえとほつれ止めを兼ねた縫い方。 |
落としミシン | 縫い目が目立たないような縫い方で、縫い代を割って、その割目に縫い目が落ちるようにして縫うこと。 |
目とび(欠点) | 縫い目の構成で,上糸と下糸のからみ合いが行われないこと。 (写真参照) 原因には、針の磨耗、曲がり、内釜の針傷、外釜の傷、針板部分の針傷、上糸を釜の剣先がすくい取るタイミングの狂い、針と剣先の間隔不良などがある。 |
糸切れ(欠点) | 糸切れには、縫い糸切れと生地糸切れ(地糸切れ)がある。縫い糸切れは、縫い糸の選定ミスや縫い糸張力の設定不良などがある。地糸切れは、針が生地糸を傷つけることによって発生する。 10回「アパレル散歩道」の、「2.2縫製/縫製工程での縫製ミスと検査見逃し、事例1.地糸切れ」を参照のこと。 |
縫いずれ(欠点) | 重ね合わせた布地を縫い合わせた時、生地がずれること。 |
縫い縮み(欠点) | 縫うことによって布地が縮むこと。送り方向に縮むことをパッカリングという。 |
シームパッカリング (欠点) | 縫いつれともいう。縫い縮みや縫いづれによって縫い目の近辺に発生する凹凸状のしわのこと。対策として、生地送り機構の工夫がある。 |
地糸切れ(欠点) | 縫製時のミシン針や送り歯によって生地の構成糸が切断されること。 対策として、ミシン針の選定、縫製速度の検討などがある。 |
縫い目滑脱(欠点) | 縫い目に力がかかった時、縫い目部分の生地糸がずれて、縫い代から縫い糸が外れること。俗に「縫い目スリップ」とも呼ばれる。 |
グレーディング | 元型であるマスターパターンをサイズ展開すること。通常はCADシステムをおこなわれる。 |
マーキング | 生地を裁断するために、延反した生地に型紙を効率よく配列すること。マーキングによって生地の用尺が決定し、製造直接原価も確定する。 |
テーラビリティ | 製服性ともいう。生地を立体的な衣料に製作するにあたり、裁断、縫製、セット性、仕立て映え、形態安定性などが要件となる。 |
総裏 | 総裏仕立てともいう。衣料の全面にわたって裏地を付けること。 |
背抜き | 上着などにおいて、総裏ではなく、肩と前身ごろにのみ裏地を付けて、背の部分の裏地を省いた仕立てのこと。 |
半裏 | 半裏仕立てともいう。上着などで、通常前身ごろには全丈に裏地をつけるが、後ろ身頃は背丈の上半分だけに裏地をつけること。 |
芯地 | 衣料品の寸法安定性、立体成型性などを補強するために、内側に用いる生地のこと。ふらし芯地と接着芯地がある。 |
接着芯地 | 生地の片面に接着剤をあらかじめ塗布し、生地とはりつけるもの。接着剤にはホットメルト系が用いられ、ポリアミド系、ポリウレタン系、EVA系などがある。 |
ファスナー |
コイルファスナー 樹脂ファスナー メタルファスナー |
面ファスナー | 鈎(かぎ)針状のフックによって引掛かり、ファスナー機能をもつ。タイプによって、強度の異なるものがある。ベルクロ、マジックテープは商標である。 |
コイルファスナー | かみ合う部分のエレメントがコイル状になっているファスナーをいう。メタルファスナーや樹脂ファスナーに比べ、柔軟性がある。 |
コンシールファスナー | コイルファスナーで、エレメント、縫い目が表地にでないタイプのファスナーのこと。ワンピースなどファスナーを目立たせたくない用途に適している。 |
ミシン糸 | かなり以前は綿糸や絹糸が使用されていたが、現在は、綿糸とともにポリエステル糸が多く使用される。素材や用途に合わせて、フィラメント糸、スパン糸、ウーリー糸、モノフィラメント糸などがある。太さは通常番手で示される。 |
ボールポイント針 |
ボールポイント針 レギュラーポイント針 (普通針) |
検反 | 縫製準備工程の一つ。生地メーカーから入荷した原反について、原反傷などの欠点部分を避けるために実施する。検反機を使用したり、めくり検反を実施する。 |
スポンジング・放反 | 巻反に残留していたひずみを除去し、寸法安定化や型くずれ防止のために実施する。放反は巻き反を開き、一定時間放置しひずみをとること。スポンジングは、スポンジング機を用いて、熱や水分(スチームを使用して、生地を安定化させるもので、毛素材でよく使用される。 |
延反 | 裁断のために、布の片耳を揃えて積み重ねること。生地の毛並みや柄などによって、延反方法を使い分けている。
(写真:ハシマ株式会社HPより) |
裁断 | 延反して積み重ねた生地をパーツ毎に切り分けること。裁断機には、たて刃裁断機、丸刃裁断機、バンドナイフ裁断機がある。最近ではCAMシステムの一貫で自動裁断も実施されている。 |
芯張り | 裁断パーツに必要に応じて、芯地を貼ること。接着芯地などがある。 |
ノッチ | 縫製時に正しくパーツが縫い合わせられるように、合印として縫い代に切り込みをいれること。 |
縫製仕様書 | 衣料品の設計図のこと。デザイン型、使用生地、縫製仕様(縫い目、縫い糸、縫い代の始末など)、副資材(ボタン、ファスナー、ホック、芯地、テープ、ブランドネームなど全ての付属品)、表示内容、包装資材など、全ての使用材料の仕様と使用量が明記された書類で、 アパレル生産には最も重要な書類の一つである。 |
CAD /CAM | Computer Aided Design(コンピュータ支援設計)/ Computer Aided Manufacturing(コンピュータ支援生産)のこと。アパレル企画、生産のグローバル化、パーソナル化が進み、ITが急速に進展している現在、CAD/CAMはアパレル製品の商品企画、生産工程では、型紙作成、生地の裁断などに不可欠なコンピュータ化自動機となっている。付属品への応用、QR、SCMのツールでもある。 |
送り機構 | 縫製では2枚の生地を縫い合わせるのが基本である。上下の生地のずれなどによって、シームパッカリングなどを防ぐため、ミシンに取り付けられた生地送り機構のこと。差動下送り、差動上下送り、針送り、先引きローラーなどがある。
差動下送り 差動上下送り 針送り 上下差動送り 先引きローラ |
アパレルの現場では、品質改善が日常的な課題となっています。次回は、この改善手法について、考え方と手法を紹介します。
コラム : アパレル散歩道25
~繊維製品の品質苦情はなぜなくならないのか~
テーマ : 品質改善の話
発行元
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター 事業推進室 マーケティンググループ
E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp URL:https://nissenken.or.jp
※当コラムの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
Profile : 清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)
43年間株式会社デサントに勤務し、各種スポーツウェアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業。趣味は27年間続けているマラソンで、これまで296回の大会に参加。
社外経歴
(一財)日本繊維製品消費科学会 元副会長
日本繊維技術士センター理事 技術士(繊維)
文部科学省大学間連携共同教育事業評価委員
日本衣料管理協会理事 TES会西日本支部代表幹事
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