思いつきラボ

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No. 161 「熱中症予防行動では“適宜マスクをはずしましょう”…」

2020/05/30

繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。

※2020年5月30日時点の内容です。

                 

新型コロナウィルス対策中心の生活様式になりつつある中で テレビの報道で“屋外では適宜マスクをはずしましょう”というアナウンスが流れてきました。今 出歩くときにマスクを着けてないと冷たい視線を感じるのに・・・何事と思いきや・・・熱中症の患者が増え始めたことによる注意喚起のニュースでした。5月も急に暑い日があったりして 身体がまだ暑さに対応できないうえに家で過ごす生活を続けていたことで たまに外出して熱中症になってしまうことになったのです。

令和2年度の「熱中症予防行動」が5月26日に環境省と厚生労働省と合同で発表されました。URL: https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/20200526_leaflet.pdf

                   

例年とは異なり「新型コロナウィルスを想定した“新しい生活様式”」を進めていく上での熱中症予防行動について取りまとめていると趣旨に記載されています。

  “新しい生活様式”の3つの基本
  ・身体的距離の確保
  ・マスクの着用
  ・手洗いや「3密(密集・密接・密閉)」を避ける

            

マスクをはずすように注意している部分を抜き出しますと

   熱中症予防行動の留意点
   「新しい生活様式」における熱中症予防行動ポイント
  ・夏期の気温・湿度が高い中でマスクを着用すると、熱中症の
   リスクが高くなるおそれがあります。
   このため、屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)
   が確保できる場合には、熱中症のリスクを考慮し、マスクを
   はずすようにしましょう。
  ・マスクを着用している場合には、強い負荷の作業や運動は避け、
   のどが渇いていなくてもこ まめに水分補給を心掛けるように
   しましょう。また、周囲の人との距離を十分にとれる場所で、
   適宜、マスクをはずして休憩することも必要です。

                  

と掲載されています。新型ウィルス対応でマスクの着用を原則としながらも熱中症対策では屋外では人との距離を保ってマスクは適宜はずしてくださいということになります。以前は外出の時にマスクを着け 屋内に入ったらマスクをはずすのがマナーだったのですが 今では接客のときにはマスクをするというのがマナーになっています・・・確かに「新しい生活様式」になっています。新型ウィルスにも熱中症にも注意してマスクの着脱は個人で判断しなさいということです。

                 

暑さ指数(WBGT)・・・

熱中症注意関連のニュースがもうひとつ流れてきました。気象庁が高温注意情報について発表基準をこれまでの予想最高気温から「暑さ指数」に変えるというものです。「暑さ指数」はいままでも発表があったのでは・・・とテレビを見ていると いままでは環境省がアナウンスしてたもので 気象庁は“気温観測値・湿度観測値・気圧観測値”のデータを提供して環境省が測定していた“黒球温度(こっきゅうおんど)観測値”と合わせて算出して「暑さ指数(WBGT)」を発表していたとのことです。

             

“WBGT”はWet-Bulb Globe Temperature の頭文字をとったもので“湿球黒球温度”と訳されています。ややこしいですが 

      暑さ指数=WBGT=湿球黒球温度

と同じものです。環境省の熱中症予防情報サイトによれば

                  

 暑さ指数とは?
 暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)は、
 熱中症を予防することを目的として 1954年にアメリカで提案された
 指標です。単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は
 気温とは異なります。暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりと
 り(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい
 ①湿度、②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、③気温の3つ
 を取り入れた指標です。

               

となってます。考え方は 1954年(昭和29年)にすでに提案されていて今回気象庁が予想最高気温から暑さ指数に変えるというのは 温度 湿度に加えて直射日光の日射や照り返しの輻射などを加味することで実状に適したものになります。

              

日常生活に関する指針 温度基準    

    

温度基準
(WBGT)
注意すべき
生活活動の目安
注意事項
危険
(31℃以上)
すべての生活活動で
おこる危険性
高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。
厳重警戒(28~31℃)すべての生活活動で
おこる危険性
外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。
警戒
(25~28℃)
中等度以上の生活活動で
おこる危険性
運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。
注意
(25℃未満)
強い生活活動で
おこる危険性
一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。

                 

    参考: https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php

             

運動に関する指針や作業者に関する指針も示されています。作業者の熱ストレスの評価に暑さ指数(WBGT)がISOやJISにも規格があります。

                 

    JIS Z 8504(制定 1999/10/20)
      人間工学 – WBGT(湿球黒球温度)指数に基づく
      作業者の熱ストレスの評価 – 暑熱環境

    ISO 7243(制定 1989)
      Hot environments – Estimation of the heat
      stress on working

    ISO 7243:2017
         Ergonomics of the thermal environment — 
         Assessment of heat stress using the WBGT
         (wet bulb globe temperature) index

                

ISOは制定時と現在とタイトルが変わっていますが ISO 7243:1989 制定時の内容に基づいて JIS Z 8504 を作成したとあります。

                   

日常生活に関する指針で温度基準(WBGT)28℃以上を厳重警戒としているのですが 同じ環境省でクールビズの室温設定目安を28℃に協力をお願いしているので混乱しないかと余計な心配をしてしまいます。さらに厚生労働省の熱中症危険ゾーンを温度28℃ 湿度60%としているので室温28℃の協力要請に疑問を感じてしまいます。暑さ指数 クールビズ室温 熱中症気温 はいずれも28℃を目安として個人で対応を考えるということのようです。

               

国土交通省管轄の気象庁と環境省と厚生労働省が統一の「暑さ指数」を基準とすることは混乱を避けられることにつながります。健康に影響を及ぼす指針となりますので「暑さ指数」が広く浸透することを望みます。ひとつだけ愚痴を言わせてもらえれば 暑さ指数といいながら℃という単位がついています。数学では指数は単位のない無名数(むめいすう)と教わった者としては抵抗感を持ってしまいます。単位があったほうが理解しやすいからだと思いますが・・・単位のある指数を見掛けることが増えてきてます・・・慣れなければ・・・。ともあれ熱中症予防については「暑さ指数」が判断基準となります。

                   

原稿担当:竹中 直(チョク)

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一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
竹中 直(チョク)

E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp

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