2014/04/30
No. 15 「富岡製糸場 世界文化遺産登録へ…」
思いつきラボ
2019/02/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2019年2月15日時点の内容です。
立春も過ぎて暦では春ですが、北海道や東北ではまたまた記録的な寒さを観測したという報道が流れてきます。・・・と思っていたら春を思わせる陽気の日もあり、体調管理に気をつけないといけない日々が続いています。寒すぎるか暖かすぎるかで、平年並みの寒さですというアナウンスがあまり聞かれない季節になっています。インフルエンザ・風疹(ふうしん)・はしかのニュースも今年はとくに多く流れています。健康管理には細心の注意を払いましょう。
天気予報や病気感染注意ほどには取り上げられていませんが、再帰性反射材の有効性が話題になることが増えている気がします。交通事故を減らす素材としてずいぶんと前から使われているのですが、JIS 規格に反射関連の規程ができたのは、なんと昭和 35年(1960年)3月からとあります。 JIS Z 9105 “反射安全標識板”で反射テープを使用した標識板の規格で、筆者も残念ながら中身の記載はまったく知りません。
その後、昭和 50年(1975年)に JIS Z 9117 “保安用反射シート及びテープ”というタイトルで再帰性反射材が制定されました。ちなみに JIS Z 9117の番号は現在でも規格番号として残ってはいるのですが、タイトルは”再帰性反射材”になっています。 JIS Z 9105 “反射安全標識板”は 1999年 1月に廃止となっていますので、再帰性反射材の規格は JIS Z 9117 ということになります。
1960年 3月 JIS Z 9105 反射安全標識板 制定
1975年 11月 JIS Z 9117 保安用反射シート及びテープ 制定
1999年 1月 JIS Z 9105 廃止
2011年 6月 JIS Z 9117 再帰性反射材 タイトル変更
JIS Z 9117 も 昭和50年( 1975年)に制定されてから何度も改訂・確認を繰り返しています。当然のことながら、改訂と並行して再帰性反射材の性能は著しく向上しています。現在の基準値は 入射角 5°観測角 0.2°の条件の時に 250cd/lx・m²(カンデラパールクス平米)となっています。
高視認性安全服に関わりのある方は気付かれたと思いますが、JIS T 8127高視認性安全服の規格では、入射角 5°観測角 0.2°の条件では 330cd/lx・m² となっていて、基準値としてはJIS T 8127 の方が高くなっています。これは再帰性反射材のタイプが標識と衣料ではことなることによります。
標識は経年変化の少ないクローズタイプ(反射材の上に保護シート被ったもの)で、衣料にはオープンタイプ(反射材がむき出しになったままのもの)がおもに使われているからなのです。今後は分かりませんが、現状では再帰性反射材の性能基準は規格書によって違いがあるということです。
ちょっと話を逸らせますが、入射角 5°観測角 0.2°というのは再帰性反射材の性能基準の基本となる角度になっています。もともと再帰性反射材の規程の基になっているのが 1970年 制定のアメリカ連邦規格“L-S-300A Sheeting and Tape,Reflective:Nonexposed Lens,Adhesive Backing”で、概略を説明しますと、高速道路で150m離れた標識を乗用車から運転者が見る条件となっているとのことです。アメリカの道路標識は 地上から 5mの高さの位置に設置することが定められているので、乗用車のヘッドライトが標識にあたる角度が 5°で運転席からドライバーが標識を見る角度が 0.2°ということになっています。
日本の JIS Z 9117 を 1975年に制定するにあたり、この入射角と観測角を採用したとあります。1979年にアメリカ連邦規格もさらに厳しい規格として“L-S-300C Sheeting and Tape, Retroreflective: Nonexposed Lens”に改訂されていますが、入射角と観測角については 5°、0.2°は変更されていません。再帰性反射材の基本角度はこれ以来変わってはいないのです。
今回のテーマの輝度(きど)と光度(こうど)の話になかなかたどり着きませんが、再帰性反射材の反射時の光の強さはJIS Z 9117 も JIS T 8127 も国際規格の ISO 20471 高視認性衣服や欧州規格の EN1150、一般利用者向け高視認性衣服などの規程は輝度で基準値を定めています。
一方、欧州規格の EN13356 アクセサリー類の再帰性反射材や国内では、(一社)日本反射普及協会の認定基準は光度で定めています。輝度と光度の単位は光の強さを表すもので、馴染みのある照度は明るさをあらわす単位になっています。
輝度の単位 cd/lx・m² (カンデラパールクス平米)
光度の単位 cd/lx (カンデラパールクス)
となっています。比較すると m²(平米)が付いているかいないかの違いになります。面積を1平米に換算して光の強さをあらわすか、そのままの面積の光の強さを表すかの違いになります。
例えばで説明しますと、JIS T 8127 クラス 3の再帰性反射材は最小でも 0.2m²使用しなさいとなっています。輝度基準値 330cd/lx・m²の反射材を 0.2m²ちょうどで使用したとすれば
再帰性反射材の輝度は 330cd/lx・m²
再帰性反射材の光度は 330cd/lx・m² × 0.2m² = 66cd/lx
となります。
面積を多く使えば光度は高くなり、面積が小さいと光度は低くなります。欧州規格のEN13356アクセサリー類の再帰性反射材の規程では、吊り下げタイプの再帰性反射材は光度規定となっていて、面積は15cm²~50cm²で光度 560mcd/lx となっています。下限と上限の15cm²と50cm²で輝度比較をしてみると
光度(cd/lx)= 輝度(cd/lx・m²)× 面積(m²)なので
15cm²のアクセサリーに必要な再帰性反射材の輝度は
0.560cd/lx = 輝度cd/lx・m² × 0.0015m²
輝度 = 0.560 ÷ 0.0015
≒ 373cd/lx・m²
50cm²のアクセサリーに必要な再帰性反射材の輝度は
輝度 = 0.560 ÷ 0.0050
= 112cd/lx・m²
となります。
光度規定の場合、面積も条件になりますので、光度 560mcd/lxを満たすには、15cm²の場合は輝度373cd/lx・m²の反射材を、50cm²の場合は輝度 112cd/lx・m² の反射材を使用すれば基準を満たすという規定になっています。要は、輝度の低いものであれば面積を大きくして輝度が高いものであれば、面積は少なくてもいいですよという解釈になります。
今回の思いつきラボは関係者向けのコラムになりました。再帰性反射材が注目されているということだけ知っててほしいです。輝度と光度は反射材に限らず光の強さを表す単位なのです。
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一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp
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