2019/09/30
No. 145 「JIS T 8127 高視認性安全服規格からのその後の拡がり…」
思いつきラボ
2018/08/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2018年8月15日時点の内容です。
JIS T 8127 高視認性安全服の規格が制定されてから2年10ヶ月ほどになるのですが、この間にこの規格をベースとした関連の団体規格が拡がっています。
JIS T 8127 は、作業従事者を作業事故から守るために作業車両運転者からよく見える視認性の高い安全服として、規格化されています。この考え方は当然のこと、一般道路利用者や子ども達の通園・通学時にも適用できるものとして、交通事故削減に取り組んでいる団体が独自の規格として制定する動きに繋がってきました。
2017年11月に(公社)日本保安用品協会が「JSAA 2001 一般利用者向け高視認性安全服」を発行しました。軽作業者の事故削減や一般の道路利用者の交通事故削減に対応した団体規格となっています。
それより先に 2016年12月には(一財)日本交通安全教育普及協会が「JATRAS 001 児童向け高視認性安全服」と「JATRAS 002 自転車通学者向け高視認性安全服」を制定しました。
こちらは子ども達の交通事故削減に高視認性安全服の機能を取り入れようと考えられたものです。交通安全教育普及の団体なので常に交通事故を減らす対策を考えていることから、高視認性安全服の規格ができたのと同時に取組が始まりました。
規格を取り入れようとしたものの「JIS T 8127 高視認性安全服」規格には“子どもサイズがない” “色数が蛍光イエロー・蛍光オレンジレッド・蛍光レッドの 3色しか規定されていない” “夏用のメッシュ素材が使えない”などの不都合がありました。
そこで独自の団体規格の JATRAS規格(ジャトラス規格)を策定することになりました。前提として“子どもサイズあり” “色数は 8色” “メッシュ素材使用可能”として作られたので、応用のきく規格となりました。もともと再帰性反射材の普及には以前から取り組んでいたこともあり、規格作成はスムーズに作業が進められました。
規格制定とともに、今度は関連商品のランドセルカバーやランドセルごと覆えるレインウェアなどの推奨規格の要望や塾帰りの交通事故が多いことへの対応として、スクールバッグや塾用かばんにも規格を作ってほしいとの要望が出始めました。
結果「JATRAS 301 児童向け高視認性安全服の関連製品 推奨規格」「JATRAS 311 児童及び自転車通学者向け高視認性安全服の関連製品―かばん類―推奨規格」が 2018年の今年に制定されました。さらに 8月5日に「JATRAS 312:2018児童及び自転車通学者向け高視認性安全服の関連製品―帽子類―推奨規格」が発行されることになりました。
これでJATRAS規格は 下記の 5つになりました。
JATRAS 001 :2016 児童向け高視認性安全服 規格
JATRAS 002 :2016 自転車通学者向け 高視認性安全服 規格
JATRAS 301:2018 児童向け高視認性安全服の関連製品 推奨規格
JATRAS 311:2018 児童及び自転車通学者向け高視認性安全服の
関連製品―かばん類―推奨規格
JATRAS 312:2018 児童及び自転車通学者向け高視認性安全服の
関連製品―帽子類―推奨規格
帽子類については、デザインアイテムとして
・アイテム1 キャップ型
・アイテム2 ハット型
さらに使用環境に合わせて、タイプ1とタイプ2に分けられています。
・タイプ1
昼間、夜間を問わず高視認性能を有するもの。
明所、暗所の両方に対応する。
・タイプ2
夜間での高視認性能に特化した、再帰性反射材を中心とするもの。暗所を重点とする。
各素材の最小面積は次のようになっています。
特徴的なのは、蛍光生地と再帰性反射材の両方を使用した明所・暗所対応のタイプ 1と暗所に重点を置いた再帰性反射材のみを使用した、タイプ 2の二通りの基準をかばん類の推奨規格と同様に設けています。
ちょっと話は逸れますが、災害時の避難にも高視認性安全服が注目され始めています。最近 だけでも“ 6月の大阪北部震度 6弱の地震”“7月の西日本豪雨”“ 7月終わりから 8月に かけての台風 12号”など大きな被害が出てしまっています。
避難時に迷子になったり足を滑らせて崖から落ちたり、行方不明者も多く出てしまいました。避難誘導の折にも見守りやすいとか、連絡が取れなくなった人を探す場合に視認性の高い服を着ていると見つけやすいという声が聞かれるようになりました。高視認性安全服という範囲ではなく、とにかく目立つ派手な服を着ていたほうが道に迷ったりした時には見つけてもらいやすいということなのです。
災害が起こった後の景色の色は、黄土色の土の色と瓦礫(がれき)の黒や灰色っぽい色彩になってしまいます。少しでも派手な色が見えると探しやすいことは間違いありません。災害時の避難用品に視認性の高い服をカンパンや水と一緒に備品として用意しておくのも必要なことに思えています。帽子やかばんでも視認性の高いものは、災害避難には有効なアイテムになります。今回の帽子類の JATRAS規格は需要の高い規格と考えているのですが、実際には再帰性反射材や蛍光生地使いの商品はあまり市場には出回っていません。帽子を取扱っている関係者の方 企画生産の検討を是非お願いしたいと思っております。
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防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp
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