2013/11/30
No. 5 「E/CとT/Cは何が違うのでしょう…」
思いつきラボ
2017/11/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2017年11月15日時点の内容です。
このタイトルの書き出しはどこかで見た気が・・・と思われた方もいらっしゃると思いますが、思いつきラボ No.78 2016年 12月 15日号で「児童向け高視認性安全服の規格が制定されました・・・」という原稿を書いているのですが、また新たな団体規格が制定されました。今回発行された規格は(公社)日本保安用品協会が制定した規格となります。
規格名と目的を紹介しますと
規格 No. JSAA2001 一般利用者向け高視認性安全服規格:2017
序文
高視認性安全服の着用が必要とされる人々には,JIS T 8127 において規定する高リスクレベルに対応する環境で作業する職業従事者以外に,高リスク レベル以外の環境で働く作業者,未就学児童・義務教育就業者・高齢者などの交通弱者,二輪・自動二輪等乗用者,歩行者及びジョギング愛好者など,一般の道路などの利用者がいる。
明所及び暗所における車両,建機などの移動体からの視認性を高めるために着用する高視認性安全服に規定する色並びに蛍光生地及び再帰性反射材の面積などの要求事項については,JIS T8127 に比べより柔軟に対応する必要がある。例えば,子供は体格に応じて蛍光生地及び再帰性反射材の使用可能な面積に 制限があり,JIS T 8127 の要件から外れることもある。また,一般利用者は より多彩な色彩及びデザインを好むとも考えられる。
この規格は,これらの幅広い要求に対応し,かつ,着用する衣服が高視認性を維持することにより,利用者の道路上などにおける移動体からの安全を確保することを目的として制定する。
となっています。
要は高リスクの作業者だけでなく、中リスクレベルや低リスクレベル対象の軽作業者や一般歩行者にも、高視認性機能の衣服の規定を設けることによって、事故の減少につなげることができるという考えになっています。
制定のいきさつを紹介しておきますと、2015年 10月 26日に JIS T 8127高視認性安全服の規格が制定されたものの、もともとが道路作業従事者や鉄道保全管理者を対象とした作業服なので、一般の人たちを対象にしているわけではありません。社会全般の交通事故削減のために高視認性安全服規格を取り入れようと考えたときに、 JIS T 8127 はそのままでは使いづらいということで、この団体規格が作られました。リスクレベルの高い作業従事者に限らず、軽作業者や通常の生活でも交通事故の危険性が高いと考えられる環境にも高視認性安全服があればという声も挙がっており、欧州規格の「EN 1150 高視認性安全服‐一般向け」を基本とした規格を望む声がつよくなってきました。
ISO 化の動きが見られない現状から、(公社)日本保安用品協会が一般利用者向けの高視認性安全服の規格を作成しようということになりました。準備委員会は JIS T 8127 の制定後まもなく検討が始まったのですが、正式には 2016年 12月に第一回目の「一般利用者向け高視認性安全服原案作成本委員会」が開催されました。
本委員会の他にいくつかの作業部会も設けられ JIS規格と欧州規格などと比較しながらの作業となりました。
2017年 夏過ぎには原案が完成し、運営規則 などの確認を経て、2017年 11月 1日正式に発行されることになりました。
JIS T 8127 高視認性安全服との違いは、蛍光生地に関しては色数が規定色 8色と推奨色 2色で現在のところ進められています。規定色の 8色については EN 1150 とほぼ同じ色度範囲で、蛍光グリーン・蛍光イエローグリーン・蛍光イエロー・蛍光イエローオレンジ ・蛍光オレンジ・蛍光オレンジレッド・蛍光レッド・蛍光ピンクとなっています。推奨色は、配色展開をする上でブルー系の色も規定してほしいという要望から、蛍光ブルーと蛍光バイオレットを参考色として取り入れています。
再帰性反射材は360°どの角度からでも視認性を確保するという規定に留め、必ずしも帯状の再帰性反射材でなくてもロゴや図柄でもよいという判断になっています。
高視認性材料の最小必要面積も安全を担保できる範囲で少ない数値で設定し、子どもや小さい女性サイズにも対応できるように考えられています。子どもサイズへの対応や色数が増えたこと、再帰性反射材の使用条件に幅を持たせたことで、製品デザインに広がりが出ると考えられます。
試験性能に関しては JIS T 8127 にほぼ合わせることで、高視認性材料自体の性能評価が下がらないように配慮されています。この規格が発行されて、一般の利用者にも高視認性安全服の効果によって交通事故からの被害者が少なくなることが望まれます。
色数が増えたことや再帰性反射材の幅の制限がなくなったこと、これは低リスクレベルではパイピングが有効であると判断したことによります。
帯状の反射材が連続でなくてもよいことや最少面積も少ない数値になっていることで、デザイン性に広がりを持たせられる規格になっています。より安全なものという考えももちろん大切なことですが、なにもなかった衣服に少しでも蛍光生地や再帰性反射材などの安全素材を取り入れることで、安全性が高まることも基準に関係なく有効なことと思います。
子ども服は可愛いことが優先しますし、高齢者向け衣料は地味な嗜好性も考慮しないと買ってもらえませんので、この一般利用者向け高視認性安全服規格はデザイナーの力量・センスが活かされることになります。
高視認性安全服の関連規格は
・JIS T 8127 高視認性安全服
(一財)日本規格協会
2015年10月26日発行
・JATRAS 001 児童向け高視認性安全服 (一財)日本交通安全教育普及協会
2016年12月15日発行
・JATRAS 002 自転車通学者向け高視認性安全服
(一財)日本交通安全教育普及協会
2016年12月15日発行
・JATRAS 301 児童向け高視認性安全服の関連商品 推奨規格
アイテム 1 ランドセルカバー
アイテム 2 ランドセルに取り付けるポーチ
アイテム 3 通園・通学時用レインウェア
(一財)日本交通安全教育普及協会
2017年 8月25日発行
・JSAA 2001 一般利用者向け高視認性安全服
(公社)日本保安用品協会
2017年11月 1日発行
となりました。
短期間の間に関連規格が増えているのは、主要な団体が現実的には事故が多い現状に危機感を抱き、交通事故削減や作業事故削減を望んでいるからなのです。まだ高齢者向けの対応や、靴・かばん・帽子などの雑貨関連の規格作成を望む声も多くありますので、これからも規格作成や普及活動に積極的に取り組んでいきたいと思っております。みなさまも御協力のほどよろしくお願いいたします。
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一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp
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