2016/02/29
No. 59 「カンデラという単位はロウソクの灯りから…」
思いつきラボ
2016/08/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2016年8月15日時点の内容です。
2016年 8月 6日(日本時間)に夏季オリンピックが開会いたしました。開催の寸前まで完成できるのかどうか心配させられた競技場や交通機関の整備などなんとか間に合っての開催となりました。この原稿を書いているのがちょうど期間なかほどの頃なのですが、日本の獲得メダル数も思いのほか多く(あくまで筆者の主観ですが・・・)存分に楽しませてもらっています。毎回思うのですが、オリンピックの時にしか見ない競技がたくさんあることと普段は見てないのに“ずっと前から応援してたんだよ・・・”という気分になるのはなぜなんだろうと・・・不思議です。
今回のリオのオリンピックでは、海の汚染問題や建設現場の資材放置やジカ熱媒介の蚊の繁殖場所の衛生面など「環境」に関する不備も指摘が多くありました。実はさまざまな規則を定めているオリンピック憲章の中に「地球環境」の為に環境に配慮することが定められているのです。
オリンピック憲章に「環境」が正式に加えられたのが2002年のアメリカ ソルトレイク冬季大会からなのですが、国際規模で環境について考えることが今では当たり前のようになっていますが、きっかけは世界中の国々が集まるオリンピックが最初だったような気がします。
オリンピックで環境問題が意識されるようになったのは 1992年 スペイン バルセロナ夏季大会からといわれています。各国のオリンピック委員と選手たちがオリンピック大会において地球を保護することを公約した「地球への誓い Earth Pledge」に署名して参加するということで、環境対策に取り組むことになりました。1994年 ノルウェー リレハンメル冬季大会では「環境に優しいオリンピック」をスローガンに挙げ、さらに 1996年 アメリカ アトランタの大会では IOC 国際オリンピック委員会の中に“スポーツと環境”という部署も設けられることになりました。
話は逸れますが、もともとはオリンピックの開催は夏季と冬季と同じ年に行われていたのですが、1994年の ノルウェー リレハンメル大会から夏季と分けて冬季のみで行うようになったのです。“ 4年に一度のオリンピック・・・”とアナウンスされますが、オリンピック大会は季節を分けて 2年に一度は開催されているのです。環境問題をオリンピックで喚起するには 2年ごとのほうが効果が高いので、意識づけの上ではタイミングのいい時期に取組が始まったといえます。
1998年 日本 長野冬季大会では「美しく豊かな自然との共存」を掲(かか)げ環境保全に取り組んだ大会にしました。大会の開会式で放たれた鳩の形をした“ハト風船”は地表に落下したあとに太陽光や水に触れることで生分解される素材でつくられていて、環境に配慮した風船ということで話題になりました。確かに「環境に配慮すると言いながら ゴム風船大量に空に飛ばしてどうすんねん」という批判にこたえるものになっていました。大会で使われる紙コップや紙トレーも生分解しやすい素材が使われていました。
繊維業界でも生分解する“ポリ乳酸繊維”の開発が盛んだったのもこの時期だったような気がします。
そして 2000年のオーストラリア シドニー夏季大会では、“オリンピック史上もっとも緑あふれる大会”といわれるほど地球環境に考慮したものを実現したのです。大会までに 200万本の樹木を植林したり、廃棄物管理の徹底や低公害車の導入、公共交通機関の利用増加など積極的な運営を実行したのです。
このような流れがあって、原稿のはじめに記載したオリンピック憲章に「環境」という文字がシドニー大会の次の 2002年 アメリカ ソルトレーク冬季大会から加えられて、環境の保全と改善を目的に多くのプログラムが作られたのです。
その後の活動はといいますと、2004年 ギリシャ アテネ夏季大会では「スポーツと環境」という冊子が全会場で配布されて、さらにアテネ大会組織委員会公認のオリンピック・パラリンピックにおける「環境への挑戦と功績」と題した編集本を発刊したりして、環境への意識向上に力を注ぎました。
2006年 イタリア トリノ冬季大会では、大会期間中の二酸化炭素(CO₂)の排出量削減計画やフロンガスを使用しない冷蔵技術を活用した飲食物の推奨やエコラベル取得商品を調達物質で優先使用したり、あらゆる分野で環境保全に取り組んでいました。
2008年 中国 北京夏季大会では「緑色オリンピック」のコンセプトで環境意識の向上に努め、大会期間に合わせて天然ガスを用いた高効率な発電所を北京に建設したり、競技場に太陽光発電設備を設置するなどして、温室効果ガス削減を目指した取り組みを行っていました。大気汚染問題を抱えている国なので、その後の継続も期待されています。
2010年 カナダ バンクーバー冬季大会は「持続可能性」というテーマに基づいた取組を行い、廃熱の再利用が注目を集めました。選手村や競技場で暖房や温水に必要なエネルギーの約90 %を排水処理場から出る廃熱を再利用することで、電力とガスの消費量を大幅に削減することができたと報道されていました。
2012年 イギリス ロンドン夏季大会では「オリンピック史上最も環境に配慮した大会」の実現に重点を置き招致活動が始まったころから取り組んで、特に既存施設の活用と新施設建設では長期利用可能なものに限定して、大会設備の選定をすすめたとあります。二酸化炭素の排出量や再生可能エネルギー利用率など数値目標も公表して取り組んだ大会でもありました。
2014年 ロシア ソチ冬季大会でも会期中や準備段階で排出される二酸化炭素などの温室効果ガスの削減に努め、地球温暖化への影響を最小化すると方針を出しています。競技会場の照明光源もLEDに置き換えるとしたことや廃棄物ゼロ活動や自然保護による自然との共生なども目標に挙げられた大会になりました。
そして 2016年 ブラジル リオデジャネイロ夏季大会ですが、準備の遅れもあり、環境への取組の具体的な報道があまりありません。大会のスローガンは「新しい世界」を掲げていて、初めてとなる“難民五輪選手団”が編成されたことなど平和的なメッセージの方が強く感じられる大会になっています。それだけ世界情勢が不穏ということなのでしょうが、オリンピック憲章に基づいてなんらかの取組はされていると思います。
新聞やテレビ報道など調べてはみたものの、いまのところ授与されるメダルが環境に配慮されたものという記事を見つけただけです。
紹介しておきますと、今回の金メダルは廃車になった部品や鏡からリサイクル精製した銀を 92.5%使用して金メッキを施したものとありました。銀メダルや銅メダルも 30%はリサイクル素材を利用しているとのことで、さらに金の採取には環境汚染が問題となっている水銀は一切使っていないということでした。自然環境ではありませんが物造りでも環境に配慮しているということのようです。
まだまだ大会は続きますが、オリンピックやパラリンピックの大会では競技だけではなく環境への配慮にも取り組んでいることを知っていただいて、残りの競技を楽しんでもらいたいと思います。
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防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
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