2016/06/15
No. 66 「災害救出は72時間のうちにと報道されますが…」
思いつきラボ
2015/11/30
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2015年11月30日時点の内容です。
いよいよ 2015年もあと1ヶ月となってしまいました。今年も災害の多い年だったのですが、災害とは人的被害や生活環境被害がなければ、それは普通の自然現象という扱いになります。壮大な自然現象の代表として、今は小笠原諸島の西之島の海底噴火が挙げられます。
信州 御嶽山(おんたけさん)や口永良部島(くちのえらぶしま)の噴火などは被災者がでたり、全世帯が避難したものの農地や施設に大きな被害をもたらしたため、単なる自然現象とはならず大災害となってしまいました。災害となるか自然現象になるかは、被害がでるかでないかだけの違いなのです。
壮大な自然現象として注目を集める小笠原諸島の西之島が噴火したのが2013年11月20日だったので、丸2年の時間が経過したことになります。島の面積は12倍となり、もともとの西之島も覆う形になってしまいました。
噴火前の西之島は最初の噴火時点では新しい島とは 500m ほど離れていましたが、1ヶ月後の12月24日には一体化してしまいました。その後も噴火を続けていて現在に至るのですが、これが陸地で起こっていたとすると大災害という扱いになるのです。
無人島なので災害とはならず、筆者としても噴火についての報道なのですが楽しみのあるものになっています。
現在の大きさは 、11月17日に海上保安庁の発表によると、東西に1900m・南北に 1950m という報道になっています。まだ終息の気配もないということなので、どこまで大きくなるのかというのも気になります。
これだけの研究材料はそうそうあるものではないので、火山噴火の研究者や今後どのようにして植物が育ちどんな生物が移り住むのかという生物学者たちにとっても興味はつきないものになっています。災害でない自然現象はやはり楽しいもののようです。
映像で見る噴煙は勢いがあり、活発な火山活動が続いているという印象を受けますが、さらに新しい溶岩の流れだしも確認されたことで、別の火口ができたようだというアナウンスもされていました。
2013年11月の噴火から2015年 7月までの噴出した溶岩などの総重量は 4億トンと推定されるとのことで、とんでもない数字と思っていたら 1990年 ~ 1995年 の長崎県 雲仙・普賢岳(うんぜん・ふげんだけ)のときは 6億トンだったそうで、現在、戦後 2番目の記録だそうです。雲仙・普賢岳と同じ量の噴出があれば島の大きさはどれほどになるのでしょうか。
海底からいきなり火山噴火で島となったわけですが、これからどのような経過をたどって植物や生物が生息するようになるのかというと、“ 3つのW(ダブリュー)による”という説があります。
まずウエイブ(wave)波です。
溶岩質の塊が波によって削られ、また海中の砂や栄養素を島に打ち上げるようになり、浜を形成していきます。そして植物の種や流木などが運ばれてくることもあります。椰子やマングローブの木は波を利用して繁殖域を増やす特徴を持っています。
次にウインド(wind)風です。
タンポポのような綿毛を持った種は風に乗って遠くまで運ばれていきます。胞子や菌類などはホコリにまぎれて移動できるので、キノコ類やカビ類は簡単に島にたどり着きます。さらに強い風は岩を削り、石を転がして細かくしていきます。雨も手伝って土壌をつくり上げていきます。
3つ目はウイング(wing)羽です。
渡り鳥が休息で寄った島に排泄物に混じった植物の種を落としていったり、渡りの虫たちが島に立ち寄ることで、生物が住み着くようになるということです。
大昔から、人間が持ち込まなくても自然の力で緑が作られてきたのです。 確認するには何百年・何千年も観察する必要があり、とてもひとりで研究できるものではありません。何代にもわたってその経過を見るしかありませんが、今の記録を引き継いでずっと観察してほしいものです。あとは、この噴火が南海トラフ地震や陸地での火山噴火の予兆でないことを願いたいと思います。今回の思いつきラボは災害とはならない噴火のお話でした。
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