2018/01/30
No. 105「かばん類にも推奨規格ができました…」
思いつきラボ
2015/05/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2015年5月15日時点の内容です。
思いつきラボのコラムがスタートしたのが 2013年10月からなのですが、2015年 3月30日号までの37話をこのたび小冊子にまとめていただきました。
思いつきラボというタイトル通り、その時の話題や質問をテーマとして取り上げていましたので、シリーズ性のあるものが飛び飛びで掲載されるようになってしまいました。その意味では小冊子となったことで関連性のある原稿を選んで読んでもらうことができるようになりましたので、興味を持たれた方は当センターの担当者か本部 広報へお問合せください。
今回のテーマも、 2015年 1月30日号で製品プリントの紹介記事を掲載しはじめたものの、なかなか思うようにプリントが入手できず結局プリントからオリジナルで作成するという流れになってしまい、時間があいてしまいました。と言いながらも作っているうちに、あれもこれもとなってしまい、20点以上のサンプルができてしまいました。サンプルが届いたときに回りにいた仕事場の仲間たちが“これがいい”やら“こちらの方がキレイ”とか・・・折角なので、人気投票をしましょうということになりました。
大阪事業所の2階の廊下にサンプルを展示して、気になったものや気に入ったものを1人2点選んでいただきました。来所されたお客様や業者の方まで、廊下を通られた人に参加してもらいました。5月の連休があったのですが、2週間ほどの期間に 55人の投票をいただきました。同時にこれだけの製品プリントを見ることもないので、思いのほか盛り上がりを見ることができました。
プリントの解説の前に結果発表をしますと、10ポイント以上を得たサンプルが 4点ありました。
投票結果
女性陣が多いので、結果 “ヒカリ物”系のプリントが圧倒的な人気ということになりました。あまり市場に出回ってないものが人気という印象です。人気のあったプリントから説明していきます。
箔プリント
今回、箔プリントは、ゴールド箔・シルバー箔・オーロラ箔と3点作ったのですが、ゴールド箔が 4ポイント、シルバー箔が2ポイントと、さらに 4位に入った発泡+箔プリントが 10ポイントなので、箔グループとしては 33ポイントということになります。トータルポイント数が 110(55人×2ポイント)ですので、30%のポイントが集まったということになります。箔人気は高いです。
箔プリントは箔のフィルムシートを使う転写プリントです。バインダー(接着剤)を引いて箔をのせて、プレスで熱を加えて加工します。バインダーの部分だけが接着して糊のついていない部分の箔シートははがれますので、ロゴだけがプリントできるということになります。
ガラスビーズプリント
本物のガラスビーズを接着するプリントです。繊維の生地にガラスが接着できるのかと思われるかもしれませんが、繊維にガラスを着けるのはかなり古くから行われている加工です。ラインストーンがくるぶしあたりにアクセントでついているストッキングが大流行したのは、30年くらい前の頃のはなしなのです。
ただ、今回のガラスビーズは球体のものを使っていて、ラインストーンのような接着面がフラットなものとは違いますので、加工は難しいですが仕上がりのキラキラ感が上品なものになります。
白色のバインダーを引いてその上にガラスビーズを撒(ま)きますと、糊のついたところだけガラスが残ります。このあとベーキング(熱処理)して固着させるのですが、ビーズの大きさが一定でないと押さえつけた時に接着ムラができてしまいますので、ビーズの品質もきれいに仕上げるには大事な要因となります。色つきのバインダーを使えばカラーのガラスビーズプリントも作ることができます。
再帰反射プリント カラータイプ
再帰反射プリントのカラータイプに 12ポイントも集まったのは意外だったというのが正直な感想です。再帰反射の色つきのものでも黄色やオレンジの反射材はよく光るのですが、反射材の中ではブルー系のものはなかなか輝度の高いものがつくれません。ブルー系で光る反射プリントは難しいのですが、このサンプルは高い反射輝度を持っています。防災・安全の立場でいえばあまり光らない反射素材となるのですが、ファッション性としての反射とすればオシャレなサンプルになったということなのです。
反射のプリント手順は、生地に接着させるバインダー層があってその上に光が逃げないように隠蔽層(いんぺいそう)を引き、その上に色をのせて(今回のサンプルはブルー)、その上に反射シートをのせてつくるのですが、何層も重ねて各層がそれぞれの役割を果たすので、再帰反射プリントがつくれるのです。今回のは直接じかに生地に刷りこんだのではなく、いちど転写紙に印刷したものを転写するという方法でつくりました。
発泡プリント+箔プリント
発泡プリントとはボリューム感のあるプリントで、インクの中に発泡剤が混ざっていてプリント後に熱を加えて膨(ふく)らますという加工なのですが、これに箔プリントをのせるというのはかなり難しい作業なのです。発泡させる温度と箔を接着させる温度が違うのと、箔は伸縮性のないフィルムなので、先に箔を置いて膨らますと箔が割れてしまいます。発泡させてから箔をのせると、今度は膨らんだ横の部分に箔がのらないということになります。ということで、ここは職人さんの腕によってできるプリント加工だということになります。
画像では判りにくいので本来は現物を見せながら説明するのがよいのですが、言葉の説明でなんとかイメージしてみてください。サンプルは東京と大阪にありますので、興味があってお越しいただける機会があれば現物をお見せすることができます。今回はアンケート調査で人気のあったプリントだけの紹介になりました。また次回にその他のプリントも紹介していきます。
さすがに繊維の検査に係わっていらっしゃるみなさまに見てもらったので、特殊なプリントの物性の心配をしてくれました。筆者がとぼけた原稿ばかり書いているので物づくりの信頼性がないのかもしれませんが、長いこと生産にたずさわってきたものとして言わせてもらいますが、“誰が今回のプリントサンプルを作ったと思っているのですか・・・作ったのはプリント屋さんです。”ということで物性試験も大丈夫です。
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一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp
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