2014/06/30
No. 19 「織物生地にも“サッカー”はあります…」
思いつきラボ
2015/04/30
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2015年4月30日時点の内容です。
まだ4月なのに早くも真夏日(最高気温30℃以上)を記録とのニュースが流れて、しかも2日続けてとか・・・
前号の4月15日号の原稿のときは北関東で雪が積もり、東京でもみぞれが降ったほど寒かったのに、爽やかな季節である春はどこへ行ったのでしょうか。4月は雨も多かったので空梅雨(からつゆ)にならなければいいのですが、暦通りの季節感がありがたいということをつくづく感じます。
今回のテーマは“色”について取り上げたいと思います。
高視認性安全服のJIS化が進められているなかで、蛍光色の測色試験というものがあるのですが基準色となるのは、蛍光イエロー・蛍光オレンジ・蛍光レッドの3色だけです。この中で蛍光レッドだけは基準を満たすものがほとんどありません。蛍光イエローと蛍光オレンジに関しては基準内に納まるものも多いのですが、なぜか蛍光レッドだけは難しいのです。
この規格のもとになっているのが1994年にヨーロッパで制定されたEN 471 高視認性作業服なのですが、ここから20年経過しても色度範囲は変更になっていないのです。基準を満たすのが難しいのに“なぜ…”とずっと思っていたのですが、先日文房具屋に寄った時に蛍光ペンの売り場で思わぬものを見つけてしまいました。蛍光ペンのラインナップにはちゃんと“蛍光レッド”が並んでいるではありませんか。思わず試し書きのサンプルペンで書いてみると・・・濃いオレンジ色が・・・これが赤?・・・戸惑ったものの、今一度表記を確認すると間違いなく“赤”の文字が・・・なるほど筆者の頭の中のレッドの色度範囲と色彩学上のレッドの範囲に大きな差があったということなのです。
赤といえば消防車の赤色や日の丸の赤が基本と思っているので、蛍光のレッドの色相も勝手に消防車の赤色をイメージしていました。確かにオレンジ気味の赤を“朱赤”と表現することもあります。世界的には濃いオレンジ色までがレッドの範囲なのかもしれません。とはいうものの、国内では濃いオレンジが赤とは呼びにくいので、生地生産の段階では日本的な赤を蛍光色にしようとしますので、なかなか基準内に納められないということになるようです。色に対する感性までは国際標準としては定めにくいのかもしれません。
筆者の疑問解消の原稿になってしまいましたが、現実に蛍光レッドを高視認性安全服の基準内に満たすのは難しい作業になっています。さらに ISO にしろ JISにしても色の規格を定める時には紙に印刷することを基本にしているので、繊維を染料で加工して表現するのはやはり違いがあると思っています。要は印刷インクと染料では同じ色を表現しようとしても限度があるということになります。とはいえ、色については紙印刷や塗料のほうが圧倒的に需要が多いので、繊維業の立場では合わせていくしかないのですが、インクと染料は違うものという認識を持っておく必要はあると考えています。
折角なので、物体色を表現する色の属性をおさらいしておきましょう。物体の色は“色相・明度・彩度”で表現します。
色相H(hue):色味を表わす指標
赤( R )・ 黄赤( YR )・黄( Y )・緑黄( GY )・緑( G )・青緑( BG )・青( B )・青紫( PB )・紫( P )・赤紫( RP )を10主要色相として、さらに各色相を 1 ~ 10 まで 10段階に細分している。円環状に配置したものを“色相環(しきそうかん)”と呼ぶ。
明度V(value):色の明るさ・暗さを表わす指標
真っ黒を 明度 0 とし真っ白を 明度 10 とした 11段階で表現する。色相のない無彩色は明度だけの表現となる。
彩度C(chroma):色の鮮やかさを表わす指標
無彩色を 彩度 0 もしくは N として、最も鮮やかな色を 彩度 15 として15 段階で表現する。 以前は 0 ~ 10 までの 10段階としていたが現在では15段階としている。
この色の 3つの属性にもとづいて色を表現するのが「マンセル表色系(ひょうしょくけい)」と呼ばれるものなのです。マンセル表色系を用いれば世界共通となるのですが、色の呼称と色相範囲にはかなりの違いがあるようです。蛍光レッドがどうしても蛍光オレンジと表現したくなるのです。今回は愚痴っぽいコラムとなりました。
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