2020/04/30
No. 159 「妖怪“アマビヱ”の力にすがってみよう…」
思いつきラボ
2015/01/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2015年1月15日時点の内容です。
思いつきラボも2回目のお正月を迎えることができました。
とはいえ、まるまる1年間掲載したのは昨年が初めてですので、実質的な一年を送れたという感じが正直なところです。ともあれ新しい年となりましたが、本年もよろしくお願い致します。
さて、2015年最初のテーマは蓄光商品の雑貨関連のお話をしたいと思います。昨年12月に東京・ビッグサイトで開催されたエコプロダクツ2014の展示会に防災・安全評価グループも参加させていただき、「エコダックスの秘密の部屋」というコーナーに蓄光商品をいろいろと紹介してもらったのですが、一般の人たちにはまだ蓄光商品が珍しいのか、思いのほか喜んでいただくことができました。
蓄光素材は市場性はあまりありませんが、さまざまな業界で使われています。筆者はもちろん繊維が最初ですが 、1984年(昭和59年)には蓄光プリントの加工開発を担当していました。この頃はいま防災関連で使用している酸化物タイプの蓄光原料ではなく、ほとんど残光性のない硫化物タイプのものが主流になっていましたので、時計の針や文字盤に使われていたくらいだったと思います。そういう意味では、蓄光業界の中では繊維はいち早く取り組みをしていたということになります。
染料プリント 白もしくは淡色生地に染料をもちいた捺染プリント
顔料プリント 濃色生地に生地色より淡い色を載せる捺染プリント
ラバープリント ゴム系樹脂をもちいた顔料プリントで伸縮生地に対応
フロッキー フロッキーシートを用いて圧着する起毛プリント
ラメプリント 細かい金属箔をちりばめたプリント
グリッター さらに細かい金属箔を顔料に混ぜ込んだプリント
発泡プリント 顔料に発泡剤を混ぜて加工し加熱して膨らますプリント
蓄光プリント バインダーに蓄光原料を加えた暗所で光るプリント
芳香プリント 香り付き微小ビーズを混ぜた匂いのするプリント
アクアプリント 撥水差を利用して濡れた時に柄がでるプリント
感温プリント 温度変化によって色が変わるプリント
など思い出すだけでも色々な手法がありました。
反射プリントや箔プリントなどはもう少し後だった記憶があります。呼称については会社が違えば表現も異なりますので、別の呼び方をしていることもありますが、プリントの内容としてはこのようなものだと解釈してください。
書いているうちに気になったので、“染料と顔料”の違いについて触れておきます。繊維の業界では水に溶けるものが“染料”で、水に溶けないものを“顔料”としています。これが他の業界になると、染料という呼び方をしないので、“水溶性顔料”という表現を使います。
繊維の業界では本来使われない言葉なのですが、一般用語として浸透してしまったので、今では耳に入っても違和感を感じなくなってしまっています。ただ繊維の業界としてはややこしい表現となってしまいますので、使い方には気を付けなければなりません。いつもながらのことかも知れませんが、蓄光の雑貨関連ネタをテーマとすると書き出したのに、蓄光プリントでプリントの話でさらに染料と顔料の話になってしまいました。
このままだとテーマに触れずに終わってしまいそうなので元にもどしますが、酸化物タイプの蓄光原料が1980年後半から出回りはじめて、他の業界が本格的に参加するようになってきました。
というのも、1987年2月に JIS Z 9100 蓄光安全標識板という規格が制定されて、安全標識の業界に需要が高まったことによります。フィルム業界・ガラス業界・セラミック業界・ゴム業界・塗料業界など、開発に熱心な状況になりました。蓄光性能の残光性が認められたことで標識への利用が可能なことになり、同時にJIS規格ができたので関連業界が一気に増えることになりました。繊維はもともと蓄光加工をファンシー商品や癒し商品向けで考えていましたので、この波には乗るところは少なかったと思います。それでも、残光性能が上がったことで初期輝度も高くなったので、ファンシー業界でもさらに需要は増えました。
この後は、蓄光原料の性能向上や加工技術の進歩で今では 720分後の残光性の基準も設けられています。まだビッグヒット商品と感じるものはありませんが、蓄光雑貨も着実に拡がってきていると思っております。
エコプロダクツの展示会で評判のよかった商品を紹介させてもらいます。筆者の感触としてはコーヒー用のカップ&ソーサーの評判が良かった気がしますので、取り上げます。商品は長崎の波佐見焼(はさみやき)の磁器に蓄光の絵付けをしたものです。
佐賀の有田焼とこの波佐見焼は早くから蓄光原料を取り入れ、しかもちゃんと光るものを作ることができた産地でした。他の陶器産地でも取り組んでいたところもありましたが、当時はあまり光るものが出来ていませんでした。有田焼と波佐見焼はなぜうまくいったかといいますと、釉薬(ゆうやく)に差があったと考えています。釉薬とは絵付けをした上に塗る上薬(うわぐすり)のことで、蓄光原料に反応する紫外線のような低波長の光をさえぎらないものが使われているからと考えています。
本来、釉薬は絵付けした色を紫外線などの光から変色を防ぐ保護の役割を持っている方が需要が多いのですが、磁器とくに白磁のように白さを特徴とする焼物はできるだけ透光性のよいものを使うことがあります。これはあくまで結果からの推測ですので、有田焼や波佐見焼が蓄光原料と相性がよいということでとらえておいてください。
画像の商品は出来上がった製品に蓄光の絵付けをしたもので、筆者が協力したのは蓄光輝度性能をあげることと通常時の色ができるだけアイボリー系にしたいということの開発でした。いわゆる蓄光の気配を感じさせないでよく光るものをつくりたいという要望に応えた商品です。
話はまた逸れますが、有田焼の窯元の方や波佐見焼の絵付けを担当している人の話を伺っていると、やはり伝統技術と職人の技に驚かされます。長い年数受け継がれていく間に新しい技が加わり、その産地の技法が作り上げられていくのが分かります。名陶であったり希少性のあるものが価値が高いのは理解できるのですが、単に物の良し悪しはどんなところで判断するのかは一般の人間には判りにくいものです。見分け方のひとつにこんな話があります。正月気分なのでお教えしておきます。
筆者 「湯呑茶碗の良し悪しを判断するのに素人でもわかる方法はありませんか?」
店主 「ないこともないですが 全くの初心者であれば気になる湯呑をじっと見つめていると向こうから話しかけてきますよ。」
筆者 「湯呑茶碗が語りかけてくるんですか?」
店主 「そうです。見る目がある人であれば“お前は 俺のことを知っているのかい?”とやさしく話しかけてきますよ。」
筆者 「にわかには信じ難い話ですが私でもできるか試してみますよ。ありがとうございました。」
というわけで、筆者がお手伝いしたとはいえ湯呑茶碗は波佐見の職人さんが作ったものなので、早速試してみました。机に湯呑茶碗を置き、静かに見つめているとどれほどの時間が経過したかはわかりませんが、なにやら語りかけてくる気配が・・・
茶碗 「You know me?」
筆者 「なななんで 英語なんだ・・・ユーノーミー?・・・なるほど!!
ともあれ、今年も一年お付き合いのほど、よろしくお願い致します。
注意:時として事実と異なる内容が掲載されることがありますので、原稿の信頼性については読者各自でご判断願います。
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防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp
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