2017/01/30
No. 81 「ミシンのステッチサンプル帳を作ってみました…」
思いつきラボ
2014/09/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2014年9月15日時点の内容です。
前号の思いつきラボ コラム「筋肉の力でシャツを破るには・・・?~誰がそのシャツを縫うんだい?~」楽しい内容で大好評でした。発想が面白いうえに検証も独自性がありました。
筆者のこども時代も(ガキの頃の方がイメージですが・・・)“ポパイ”や“超人ハルク”といったテレビ漫画や特撮ドラマで、これから闘うぞといった場面でシャツを破くシーンにはドキドキしたものでした。時代は変われど子供心の感性は同じようなもののようです。ともあれ嬉しいコラムになりました。
さて、今回のコラムは No.22 の合成繊維の続きになります。
化学繊維の中には13種類の合成繊維があり、ナイロン・アラミド・ビニロン・ビニリデン・ポリ塩化ビニル・ポリエステルと6種類まで説明しましたが、馴染みのない種類の方が多かったと思います。今回も衣料品にはほとんど使われていない繊維もありますが、この機会に“こんな繊維もあるんだ”くらいで構いませんので、指定用語になっている繊維名について見直しておきましょう。
まずアクリルからになります。ナイロンは“絹”を模して開発されたと説明しましたが、アクリルは“毛”の代用となることでその需要を高めてきました。アクリルの生産はステープルが圧倒的に多いです。使用用途がセーターや毛布やマフラーなどの利用が多いことから、理解はしやすいと思います。ウールに似せているのでふっくらとして暖かいことが特徴ですが、ウールより軽く発色性のよいことは合成繊維の特性を活かしているといえます。
アクリルはアクリロニトリルが主原料となるのですが、アクリロニトリルだけでは繊維になりにくく、塩化ビニルや酢酸ビニルなどを加えて製品にしています。家庭用品品質表示法ではアクリロニトリルの比率が85%以上のものをアクリルとし、それ以下のものをアクリル系と区別することとしています。
以前はアクリロニトリルが50%以上のものがアクリルで、40%~50%のものをアクリル系とすると決められていたのですが、ISO規格では85%となっていたので日本でも国際基準に合わせたかたちになっています。ちょっと古い文献には50%以上と記載されていますので注意が必要です。
アクリルに関する雑学を紹介しておきますと、1960年代にアクリルセーターが人気商品となり、そこからニットブームが始まるのですが、それまではニット製品は肌着が中心で莫大小(メリヤス)と呼ばれていました。アウター用のニット製品の出現でファッション用語として“ニット”と置き換えられるようになったのです。アクリルの出現によって“メリヤス”という呼称が“ニット”という呼称に変わっていったといえるのです。いまでは“メリヤス”という言葉をあまり聞かなくなってしまいました。
ポリエチレンもプラスチック容器や包装フィルムではお馴染みですが、ポリエチレン繊維もあるのです。日本が誇る“スーパー繊維”と呼ばれる高機能繊維のひとつなのです。高強度・高弾性に優れていることから、防刃性(ぼうじんせい)手袋や防護服などに使われています。もうひとつの特徴は熱伝導性が非常に高く、作業服の暑熱対策の素材としても注目されています。接触冷感度はポリエステルの2倍ほどの数値を示すことから、作業服用途や寝具用途への需要が高まってきています。
表示に PE と書かれている記号はポリエチレンの略字となっています。繊維の業界ではPEをポリエステルの意味で使用することもありますので、少し気をつけなければいけません。
ポリプロピレンも一般衣料に使われることはほとんどありませんが、包装袋やフィルムでは PP や OPP という表示になります。ポリプロピレンは繊維の中では最も比重が低く、0.91 で水よりも軽いのです。この特徴を利用して帆布(はんぷ)に使われることも多く、船の積載重量を軽くすることや転覆等の事故で水面に落ちたとしても水より軽いので沈むことがないというメリットがあります。
ポリプロピレンは水もほとんど吸わないので、テントにも使われています。軽くて水を吸わないという特徴は資材繊維としては需要は多いです。ポリプロピレンを使って競泳水着を作れば、軽くて水をほとんど吸わないので最適素材ということになるのですが、競泳水着の国際ルールには「水着に浮力を持たせてはならない」という規則が定められているので使用できないのです。
ポリウレタンは一般衣料やスポーツ衣料でも身近な存在ですが、ゴムのように伸びる伸縮性が大きいことと元に戻る弾性回復に優れているというのが最大の特徴です。肌着・靴下・水着などフィット性を求められる服は、ポリウレタン糸がないと今では物作りができないくらい存在感のある素材になっています。ポリウレタンは伸びるので、織物にしろニットにしろ生地を作る時にはテンション(張力)が掛かるので、技術的にはポリウレタン入りの生地を造るのは難しいのです。
糸の形状を紹介しておきますと
ベアヤーン(Bere Yarn)
ポリウレタンから直接フィラメント糸にしたものです。ニット生地で“ベア天”と呼ばれる生地はポリウレタンのベアヤーンを使った天竺(ニット)のことです。
FTY (Filament Twisted Yarn)
ポリウレタンを芯にナイロンやポリエステルの糸でカバ-リングした糸のことです。
CSY(Core Spun Yarn)
ポリウレタンを芯に綿やウールで包んで紡績した糸のことです。
などが代表的な糸になります。
ポリクラールですが聞いたこともないという方も多いと思いますが、難燃性が最大の特徴でカーテンやカーペットなどに使われているとのことです。災害時の持ち出し袋にも使われているものがあるそうで、火災の折に中の物が燃えにくいという商品で現金や通帳類を炎から守ることになります。簡易型の移動可能な金庫といったところでしょうか。家や会社に備えてある持ち出し袋を見れば、ポリクラールの商品を見つけられるかもしれません。
ポリ乳酸は、数年前に話題になった生化学分解の繊維です。原料はサトウキビやトウモロコシで土の中で分解される繊維で、自然循環型の繊維ということになります。話題になった理由は、地球温暖化の問題で環境対応型の商品が求められるようになったことや産業廃棄物の量が今後も増大していくことを懸念して、ゴミ減量問題の対応品として取り上げられたことによります。その後、国際的には食糧不足の時代に農作物を食糧ではなく、資材原料にするのはいかがなものかという議論に発展してしまい、今はあまり話題にしなくなりました。
ということで13種類の合成繊維の紹介となりました。
一般衣料以外に使われている資材繊維が多くあるということだけでも、知識に加えておいてください。最後におまけですが 1997年(平成 9 年)までは“ベンゾエート”という合成繊維が家庭用品品質表示法に掲載されていました。本物の絹と区別できない合成繊維と言われていた繊維です。
ということで合成繊維まで終わりますが、まだ無機繊維もありますので繊維の雑学知識はつづきます。
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防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
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