思いつきラボ

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No. 19 「織物生地にも“サッカー”はあります…」

2014/06/30

繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。

※2014年6月30日時点の内容です。

富岡製糸場と絹産業遺産群が2014年6月に正式に世界遺産登録となりました。事前予測報道でも登録確実と言われていたので、すでに受入来訪者の許容範囲を超えてしまっています。正式登録ということでさらなるブームになりそうですが、現段階で予約の受付を休止しているとのアナウンスがされています。駐車場やトイレ設備増設にも時間を要するようなので、訪問はちょっと先延ばしにしたほうが良さそうな雰囲気です。

地元の絹産業も活気づいているとのことで、繊維業界にとってはありがたい話になっています・・・といっても国内の絹産業はだいぶ縮小されているので、いきなりの大量生産は無理なようです。それでも注目を浴びていることは間違いないことなので、この機会に絹業界は安定供給ができるようになればいいのにと考えております。かといって急にカイコの数を増やすわけにもいきませんの、従来通りの品質優先の手の掛かる商品作りが望ましいかもしれません。結局のところ生産サイドでは大きな変化は見られないかもしれませんが、若い職人さんが増えることを期待したいと思います。

繊維業界の“サッカー”

2014年 FIFA ワールドカップで、日本は1次リーグで姿を消してしまいました。残念なことにアジア勢が1勝もできなかったことが衝撃で、4チーム出場しているので計12試合戦ったことになるのですが・・・世界の壁は厚いということになります。
これから決勝トーナメントが始まりますが、16チームのユニフォームのブランドは NIKE(ナイキ)が 5チーム、adidas (アディダス)が 5チーム、 PUMA(プーマ)が 4チーム、Lotto(ロット)と BURRDA(バルーダ)がそれぞれ 1チームとなっています。決勝はどの組み合わせになるのでしょうか?

繊維業界にも“サッカー”と呼ばれる織物生地があります。ワールドカップを記念して“サッカー”生地のお話をしておきます。(とっても無理なこじつけのような気がします・・・)
あらためて言うことでもありませんが、スポーツのサッカー(soccer)と織物のサッカー(sucker)では当然スペルも違います。織物は正式にはシアサッカー(seersucker)という名称で、夏用ジャケットやパジャマに使われることの多い素材です。表面に凹凸(おうとつ)のあるのが特徴でこの凹凸を“シボ”と呼びます。

元々はインドの亜麻布(あまふ)だったとのことで 、seer(シーア) はインドの量の単位で語源に使われているとの説があります。1seer は2ポンドくらいとのことで、およそ1リットル弱くらいの量になります。sucker(サッカー)は吸う物という意味もあり、吸水性の高い生地という意味合いを持っているのかもしれません。夏によく使われるのは吸水性がよく清涼感があるためなので、あながち的外れでもなさそうな気がします。

サッカー生地とクレープ生地

このシボはどのように作られているかといいますと、経糸(たていと)の張力を部分的にゆるめてそのたるみで本来はシボをだしていたのですが、最近のものは撚りの甘い糸と通常の撚りの糸との収縮差でシボを出す方法がとられています。甘撚りの糸が仕上げの時に収縮してシボを出すということです。日本国内でもこの手法は江戸後期には使われており、しじら織という名前でつくられていました。シアサッカーとしじら織は同じ組織で、しじらはシボのことです。

シボのある生地は他にもありますが、代表的なものはクレープと呼ばれる生地です。こちらのシボは経糸にほとんど撚りをかけていない甘撚りの糸を使い緯糸(よこいと)に強い撚りをかけた強撚糸(きょうねんし)を使い、精錬や染色によって生地が縮むことでシボを出しています。クレープは強撚糸を使うのが特徴になります。日本でも古くから作られている織物で、こちらは縮緬(ちりめん)と呼ばれています。もとは絹織物として作られていましたが、現在では綿や合繊でも商品化されています。

まとめ

サッカーは経糸に甘撚りの糸を使い、クレープは緯糸に強撚糸を使って糸の収縮差を利用してつくられているということです。2014年 FIFA ワールドカップにかこつけた原稿となりました。
これから決勝トーナメントで白熱したいい試合がまだまだ見られそうです。皆さんもクレープ食べながらのサッカー観戦とまいりましょう。(あまりに短絡的なまとめだと思いますが・・・)

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