2024/05/13
《化学物質のいろは》第7弾 紫外線吸収剤/安定剤とは?規制動向と繊維製品への影響
おさえておきたい基礎知識
2026/04/24
新年度が始まり、新しい生活をスタートされた方も多いのではないでしょうか?春の陽気とともに、窓を開けてさわやかな空気を取り込んで過ごす機会も増える季節ですね。
実は、私たちの身の回りの空気には、さまざまな化学物質が含まれていることをご存知でしょうか。その中でも、空気中に揮発しやすい物質として知られているのが、VOCs (揮発性有機化合物)です。エコテックス®認証においても、2026年6月から新たに規制物質が追加される予定となっており、改めて注目が高まっています。
今回の「化学物質のいろは」では、以前「揮発性有機化合物 (VOCs)」でご紹介した内容に加え、VOCsの基礎知識と今後の規制動向について、改めてご紹介します。

VOCsとは、Volatile Organic Compoundsの略で、揮発性を有し、大気中で気体状となる有機化合物の総称です。VOCsに該当する物質は約200種類あり、代表的なものとして、トルエン(CAS:108-88-3)、スチレン(CAS:100-42-5)、シクロヘキサノン(CAS:108-94-1)などがあります。

図2 トルエン(CAS:108-88-3)の構造式
エコテックス®では、VOCsについて「製品からどれくらい空気中に出ていくか(放散量)」と「製品の中にどれくらい含まれているか(含有量)」の2つの観点から規制を行っています。
① VOCs放散量の規制
主にインテリア用品や建材を対象に、製品から空気中へどれくらいVOCsが放出されるかを測定し
ます。
<試験方法> 小型チャンバーと呼ばれる箱のような容器にサンプルを入れ、温度や湿度、空気の入
れ替え回数を一定に保ちます。その中でサンプルから出てきたVOCsを集め、分析装置(GC-MSなど)
で量を測定します。
② VOCs含有量の規制
主に繊維製品や薬剤を対象に、製品の中にどれくらいVOCsが含まれているかを測定します。
<試験方法> 繊維製品の場合は、サンプルを専用の管に入れ、分析装置(TD-GC-MSなど)で測
定します。薬剤などの場合は、有機溶媒で成分を取り出した後、分析装置(GC-MSなど)で量を
測定します。

図3 分析装置(例:TD-GC-MS)
VOCsは、主に塗料、接着剤、インク、洗浄剤などに含まれる「溶剤」として使用されています。
繊維製品では、傘やレインコートの防水・撥水加工に使われるコーティング剤や、合成皮革の表面加工などにも利用されており、私たちの身近なさまざまな製品に使われています。
VOCsの中には、腎臓や肝臓の機能に影響を与えたり、遺伝毒性を持つものもあります。また、大気汚染の原因となる「光化学オキシダント※1」や「浮遊粒子状物質※2」の発生にも関係しています。
光化学オキシダントが増えると、「光化学スモッグ」と呼ばれる、空が白くもやがかかったような状態になることがあります。特に、春から夏にかけては「気温が高い・日差しが強い・風が弱い」といった条件が重なり、発生しやすくなるため注意が必要です。
また、浮遊粒子状物質は非常に小さいため、空気中に長くとどまりやすく、呼吸とともに体内に入り込みやすい特徴があります。肺や気管に付着し、呼吸器へ影響を及ぼすことがあります。中でもPM2.5(粒径2.5µm以下の粒子)は、肺の奥まで入り込みやすく、喘息や気管支炎のリスクを高める可能性があるとされています。さらに、新築や改築後の建物では、建材や接着剤などから放出されるVOCsにより、頭痛やめまい、吐き気などの症状を引き起こす「シックハウス症候群」も問題となっています。
※1 光化学オキシダント:工場の煙や自動車の排気ガスなどに含まれている窒素酸化物(NOx)やVOCsが、太陽からの紫外線を
受けて光化学反応を起こし、オゾンやパーオキシアセチルナイトレートを生成します。これらの酸化力
の強い物質の総称です。
※2 浮遊粒子状物質:大気中に長時間浮遊する、粒径10 µm以下の非常に小さな粒子のこと。
このように、環境や人体への影響が懸念されるVOCsについては、世界的にも規制が強化されています。
▶ 欧州:REACH規則
REACH規則では、人の健康や環境への影響が特に大きいと考えられる物質は、「SVHC(高懸念物質)」として指定されます。これらの物質は、将来的に使用が禁止または制限される可能性があります。SVHCに該当するVOCsは表1のとおりです。最近では、2026年2月に新たにn-ヘキサンが追加されました。
表1 SVHC(高懸念物質)に該当するVOCs

▶ 中国:GB規格
中国では、製品に含まれるVOCsなどの有害物質について、制限値を定めた9件の国家強制標準(GB規格)が公布されています。これにより、塗料、接着剤、インク、洗浄剤などの含有量が規制されています。2026年6月からは、工業塗装分野に対する新たな規制が施行される予定です。これまで分野ごとに分かれていた基準が統一されるほか、VOCsに加えてSVOC(半揮発性有機化合物)※3 も管理対象となり、より厳しい安全基準へと見直されます。
※3 SVOC(半揮発性有機化合物):Semi Volatile Organic Compoundsの略。VOCより沸点が高く揮発性の低い物質のこと。
一部のSVOCは人への健康に悪影響を与えることが知られている。
エコテックス®では、TVOC(総揮発性有機化合物)※4 を含む以下の物質に対して、VOCs放散量の規制をしています。
※4 TVOC(総揮発性有機化合物):Total Volatile Organic Compoundsの略。一般的にGC-MS分析においてn-ヘキサンから
n-ヘキサデカンの間に溶出するVOCの総和をTVOCとして定義することが多い。
表2 エコテックス®各認証におけるVOCs放散量の規制値 (単位:mg/㎥)

また、VOCs含有量に関する規制では、2026年6月より新たにn-ヘキサン(CAS:110-54-3)、二硫化炭素(CAS:75-15-0)、塩化ビニル(CAS:75-01-4)が規制物質として追加される予定です。
表3 エコテックス®各認証におけるVOCs含有量の規制値 (単位:mg/kg)

※規制の詳細については、OEKO-TEX®RSLをダウンロードしてご確認ください。
私たちの身近に存在するVOCsは、今後さらに規制物質が増え、規制が強化されていくことが予想されます。エコテックス®認証を取得することで、さまざまな規格や法規制への対応が可能になります。試験に関するお困りごとがございましたら、ぜひ一度ご相談ください。
また、昨年スタートしたニッセンケン公式Instagramでは、化学試験の裏側や日々の業務に加え、化学物質に関する豆知識や最新トピックスを発信しています。ぜひこちらもチェックしてみてください。

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一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
ライフ アンド ヘルス事業本部 化学試験事業部
E-mail : oeko-tex@nissenken.or.jp
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