2021/04/26
ニッセンケンの新鑑別技術研究に関する論文が世界的学術サイト【ScienceDirect】に掲載されました
技術情報・研究情報
2025/04/16
ニッセンケン品質評価センター(以下、ニッセンケン)では、繊維製品の品質管理技術向上を目的として、化学分析とAI技術を融合した新たな判別技術開発の取組みを開始しました。本稿では、東京大学大学院工学系研究科の松尾研(松尾豊教授・岩澤有祐准教授研究室)発のAIスタートアップ企業である株式会社EQUES(以下EQUES)の協力のもと、従来の手法では識別が困難であった繊維種の判別に対し、ディープラーニング※技術を適用した検証結果について報告します。
ニッセンケンではこれまで、従来の化学分析に多変量解析を組み合わせることで、獣毛種、ポリエステル種(PET・PTT・PBT)、麻種(リネン・ラミー)など、従来の化学分析方法では明確な識別が困難な繊維種の判別技術を開発してきました。特に2022年にPETボトル由来のリサイクルPET繊維の判別手法を開発した際には、大きな反響があり、現在では多くの試験依頼を受けるようになりました。
こうした試験技術の開発により、高い識別精度を実現してまいりましたが、ニッセンケンではさらなる精度向上を目指し、より高度な識別技術の実現に向けた挑戦を続けています。
このような背景から、AIを活用して一層の技術向上と新たな品質管理技術の可能性を探るため、EQUESの協力のもと、「見た目や成分が非常に類似していて、従来の化学分析から人間が確実に識別することが困難で、多変量解析を適用しても十分な判別精度が得られなかった」繊維種について、AI技術、特にディープラーニングを活用した繊維種の判別に挑戦しました。
※ディープラーニング(Deep Learning):AI(人工知能)の一種であり、大量のデータを学習させることで、自動的にパターンを抽出・識別する技術。
その結果、ディープラーニングの活用により、多変量解析だけでは判別が難しかったサンプルのうち、最大で80%以上の精度での判別が可能となりました(図1参照)。これにより、基本的な多変量解析手法とディープラーニングを組み合わせて使用することが、繊維種判別において効果的であることが明らかになっています。
ニッセンケンは、今後もAI技術を含む最先端のテクノロジーを積極的に活用し、繊維製品の品質管理技術のさらなる向上を目指してまいります。これにより、より高精度で信頼性の高いサービスを提供し、繊維・ファッション業界全体の品質向上に貢献してまいります。
株式会社EQUES 創業者・ 取締役 CTO 助田一晟氏AI技術の進化とともに、品質保証のあり方も大きく変わろうとしています。中でもディープラーニングは生成AIをはじめとして多用されており、説明性や信頼性に欠ける印象を持つかもしれません。しかし、元を正せばディープラーニングで用いられるニューラルネットも統計モデルの一種であり、従来の回帰分析と通ずる部分、融合できる部分もあります。信頼されるAIシステムとは何かを問い続け、新しい技術を正しく理解し正しく使う意識が重要と考えます。EQUESはこれからも人とAIの力を融合させ、安心して使えるプロダクトを社会に届けてまいります。
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター 研究開発担当 舟橋みゆき今回の取組みでは、従来の手法では識別が難しかったサンプルにディープラーニングを適用することで、精度向上が確認できました。化学分析にAIを適用することは、その解析過程がブラックボックス化するため注意も必要です。しかし、適切な知識を持ったうえで上手く活用すれば、これまで難しかった品質管理の課題にも対応できる可能性が広がります。私たちはAIも品質管理のひとつのツールと考え、検査機関としてこれまでにない新しい試験技術の開発に挑戦し続けます。
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