おさえておきたい基礎知識

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《化学物質のいろは》第9弾 有機スズ化合物

2024/07/02

世界の化学物質の使用状況において、実に25%を占めている繊維関連製品の生産。昨年9月より開始した本コラム・《化学物質のいろは》では、SDGsの目標の1つでもある「12 つくる責任、つかう責任」を担う繊維産業・関連産業に携わるすべての方に、少しでもお役に立てるよう、化学物質に関する基礎知識と最新情報をお届けします。

図1 繊維産業チェーン概念図

第9弾では、弊センターで試験を実施した中で検出頻度が高い化学物質の中から「有機スズ化合物」をピックアップしてご紹介いたします。 有機スズ化合物はスズと炭素が共有結合した化合物の総称で、合成樹脂安定剤をはじめ、殺菌・殺虫剤、防腐剤として、産業、農林業および水産業など幅広く使用されている化学物質です。一方、有機スズ化合物は内分泌かく乱物質(環境ホルモン)や皮膚刺激性といった毒性を持つことでも知られており、スタンダード100をはじめ欧州や日本 (有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律 等)など様々な国で規制されています。

用途/分析方法

主にPUコーティングの生地、プラスティゾルプリント、ゴム、接着剤、ポリ塩化ビニル(PVC)の熱安定剤などの高分子材料の生産における触媒として使用されます。
主な試験方法の流れは、サンプルを有機溶剤等で抽出し、誘導体化後、GC-MS等の分析装置にて定量します。規制物質の中では、特にジブチルスズ(DBT)化合物の検出頻度が他の規制物質に比べて高くなっています。
※試薬等で分子構造を変化させ揮発性を高めることで検出感度を向上させます。

図2  トリブチルスズ(TBT)化合物 構造式  ※ Xは陰性基 (ハロゲン等)

有害性

内分泌かく乱作用、生殖毒性、皮膚刺激性等の毒性を有する恐れがあります。
また、難分解性も懸念されており海洋汚染にも影響を与えています。

主な規制

▶エコテックス® ※ 化学物質名の詳細はニッセンケンのHPをご覧ください。
 ・スタンダード100
 -Annex 4- (レザースタンダードも同様)
  2物質:0.5 mg/kg / 1.0 mg/kg  (製品クラスⅠ/製品クラスⅡ~Ⅳ)
 16物質:1.0 mg/kg / 2.0 mg/kg  (製品クラスⅠ/製品クラスⅡ~Ⅳ)
 -Annex 6-
 18物質:0.5 mg/kg  (全ての製品クラス)
 ・エコパスポート
  5物質:5 mg/kg / 0.5 mg/kg  (非希釈薬剤/希釈薬剤)
 13物質:1 mg/kg / 0.5 mg/kg  (非希釈薬剤/希釈薬剤)


▶欧州:REACH 付属書XVII
▶日本:化審法 第二種特定化学物質

ニッセンケン化学試験事業部からの一言アドバイス

有機スズ化合物は多くの規格や法律において規制対象となっています。また、他の規制物質に比べて規制値を超えて検出する頻度が高いため、第8弾でご紹介した塩素化ベンゼン/塩素化トルエン同様、注意が必要な物質です。エコテックス®認証を取得することで様々な規格や法律にも対応が可能となります。
これからもエコテックス®の規制物質にご注目ください!

【有害化学物質に関するお問い合わせ先】
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
ライフ アンド ヘルス事業本部 化学試験事業部
E-mail : oeko-tex@nissenken.or.jp

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