2016/12/15
No. 78 「児童向け高視認性安全服の規格が制定されました…」
思いつきラボ
2018/07/30
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2018年7月30日時点の内容です。
世界的なニュースとなっていた、タイ王国のチェンライ県にあるタムルアン洞窟に閉じ込められていた少年たち 13人が無事救出されました。6月23日に不明となってから7月2日に全員の無事が確認されるまでと、7月10日に救出完了まで18日間時間的なことや救援物資を運んだプロ級のダイバーですら犠牲になったことを 考えれば、奇跡的な救出活動であったと報道されていました。そんな救出活動に日本の蓄光タイルが有効に活用されたというアナウンスが届きました。
使われたのは、福島県川内(かわうち)村で生産された、コドモエナジー株式会社(本社 大阪市旭区)の蓄光タイル「ルナウェア」で避難誘導標識として利用されている商品です。セラミック製品で床面設置が可能なもので技術の基になっているのは、佐賀県の有田焼の技術となっています。有田焼の透光性の高い釉薬(ゆうやく)は蓄光材料との相性がよく、発光輝度の高い商品を造るには適した磁器といえます。さらに磁器であることを活かして、耐水性や耐火性に優れていることも大きな特徴になっています。印刷技法も独自の技術があり、光沢のある高級感を備えた商品になっています。
写真提供:コドモエナジー株式会社 |
今回の救出は、当初ポンプによる排水や地上からの掘削など検討が重ねられたものの、結局は洞窟内潜水救出しかないとの判断になったようです。その上で、タイ王国の軍や警察対策本部が水の中でも光ることや救出現場での照射条件でも 10数時間光り続けることを確認したのち、救出順路や洞窟内の灯りとして救出前日に少年たちのいる場所や救出順路や水中にも持ち込んで、救出当日にはダイバーのヘルメットや足ひれにも装着して、少年たちにも持たせて救出活動を実行したと報じられていました。
ともあれ無事救出されて本当によかったです。
現在の蓄光性能を有した標識は、屋外使用の場合 720分継続して光っていなければ、基準を満たせないものになっています。 720分は12時間ということですので、これは最悪のケースを想定して冬場の18時頃災害が発生しても、翌朝の 6時まで光って見えるという規格になっています。屋内の避難誘導標識の規格は 60分までの測定となっていますが、いまでは 720分まで継続して光るまで性能は上がっているのです。「ルナウェア」はもちろん基準を満たした商品なので、救出現場での照射条件でも 10時間以上の発光が可能だったのです。
もうひとつ、「ルナウェア」でなければできなかったと思われることは、水中で配置して光るという条件に適していたということにあります。もともと有田焼の磁器ですので、重量もあり生活陶器として使用されるのに水には強いということになります。実際の濁流のなかで僅かにでも矢印の向きが視認できれば、救出の順路方向を間違えずにすみます。水の流れがあるところで水底に配置をするには、ある程度の重量がないと流されてしまいます。さらに充分励起させてから水の中に持ち込んでも光りますので、今回の事前確認も問題は無かったと考えています。
本来、避難誘導標識は施設設置が前提となりますが、今回の事例で暗所での捜索活動に有効ということが証明されました。火事の鎮火の後の施設内の検証や夜間の山の中や暗所での捜索などに、帰路に迷わないように矢印の付いた蓄光タイルがあれば心強いものになります。蓄光商品に関しては、輝度性能にしても残光性能にしても日本は最高レベルの技術を有しています。
今回のニュース報道で海外にも蓄光タイルが注目されたことと思いますので、国内だけでなく海外でも普及が進むことを期待しております。筆者としても「ルナウェア」の初期の開発から知っている商品なのでことのほか嬉しいニュースとなりました。
雨季とはいいながらも、大雨によって水位があがって洞窟から出られなくなったのも異常気象のせいかもしれません。アメリカで 52℃、ノルウェーの北極圏で 30℃超え、欧州での洪水など世界的におかしくなっています。我が国でも、気温が埼玉県熊谷市で 41.1℃の国内最高記録が出たり、経験したことのない本州の東から西へのさらに九州に渡ってから北から南への台風など、思いつきラボでも書ききれないほどの異常な現象がおきています。猛暑に関しては間違いなく地球温暖化であることを示しています。温暖化をすぐに止める手だてもありませんので、猛暑・災害をうまくかわすよう個人で考えるしかありません。
筆者もクールビズ用のシャツを作製してみました・・・画像を見てもらえれば涼しさが伝わると思います。(違うと思いますが・・・)
参考:
タイの救出に使われた「ルナウェア」生産会社
PDF版はこちらから
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一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp
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