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《化学物質のいろは》第33弾 -夏休み特別編- 液体クロマトグラフィーとは?身近な実験で学ぶ仕組みと原理

2026/07/24

 いよいよ夏休みシーズンが始まりました。夏休みといえば、自由研究。子どもの頃、「なぜ?」「どうして?」と不思議に思いながら、身近なものを観察したり、実験したりした経験がある方も多いのではないでしょうか。《化学物質のいろは》の連載を続ける中で、「実際にどのような方法で分析しているのか」「分析装置について知りたい」というお声をいただくことが増えてきました。そこで今回は、数ある分析手法の中から、液体クロマトグラフィーの原理を、身近な実験を交えてご紹介します。

液体クロマトグラフィーとは?

 液体クロマトグラフィーとは、液体サンプル中に含まれる混合物を分離し、目的の物質を測定する手法です。液体(移動相)の圧力で対象を押し出しながら、液体サンプル中に混在する多種の物質をカラムと呼ばれる管の中で分離させます。目的となる物質に適した移動相やカラム条件を設定することで、当該物質を特定しやすくなります (図1)。

 液体クロマトグラフィーを取り入れた分析装置として、ニッセンケンでは複数の高速液体クロマトグラフを所持しています (例:図2)。これらの分析装置は高圧で送液することを特徴としており、短時間での高分離を可能としています。また、繊維製品や薬剤に含有する残留農薬やPFASなどの有害物質を測定する目的で使用されるだけではなく、製薬・環境・食品・臨床検査・材料化学など幅広い分野で使用されています。

図1:液体クロマトグラフィーの一例
図1:液体クロマトグラフィーの一例
図2:LC-MS/MS
図2:LC-MS/MS

 現在の分析装置はどれも高度に精密化されたものですが、その根底にある考え方はとてもシンプルで、実は身近な方法から発展してきました。液体クロマトグラフィーをはじめとするさまざまな分離技術の原点といえるのが、「ペーパークロマトグラフィー」というごく簡単な手法です。ここからは、皆さんが馴染みのある身近なものを通して、この分離プロセスを実験形式でご紹介いたします。

ペーパークロマトグラフィー実験 ⚗️

 今回は液体がインクを吸い上げながら色を分ける「ペーパークロマトグラフィー」の実験を行いました。

 黒インク(黄・赤・青を混ぜたもの)と、それぞれの単色インクをろ紙に垂らします(図3)。ろ紙の端を水の入ったコップに浸すと (図4)、水がろ紙にしみ込みながら上へと移動し、その流れに乗ってインクが運ばれていきます(図5)。しばらく待つと、混ざっていた色がグラデーション状に分かれて見えるようになります(図6)。

図3:インクを垂らしたろ紙
図3:インクを垂らしたろ紙
(左から:黒、黄、赤、青)
図4:水に浸したろ紙
図4:水に浸したろ紙
図5:分離が進行する様子
図5:分離が進行する様子
図6:分離した状態
図6:分離した状態

原理の説明

 黒インク(黄・赤・青を混ぜたもの)において、なぜこのように色ごとに分離するのかというと、見えている色に含まれる複数の色素にはそれぞれ、ろ紙に捕まりやすいものと捕まりにくいものがあるからです。ろ紙の上を進む途中で何度もろ紙に引き留められるため、その程度の違いによって各色が分かれていきます。

 これを応用したものの一種が液体クロマトグラフィーで、サンプル中に含まれる物質ごとの極性の違いを利用して分離を行います。サンプルをカラムに流すと、極性の違いによってカラム内に引き留められる時間が変わるため、物質ごとにカラムの入口から出口に到達するまでの時間がずれていきます。

 ここでイメージしやすくするために、流行りのカプセルトイを例に挙げます。

 皆さん、カプセルトイがたくさん並んでいる一方通行の道を、様々な人が一斉に通過する様子を想像してみてください。ご存じの通り、人には様々なタイプがいます。カプセルトイに興味がない人は歩行速度を落とすことなく進むでしょう。一方、カプセルトイに興味がある人は、歩行速度を落としどのような中身か確認する人や足を止めカプセルトイマシーンを回す人もいるでしょう。様々なタイプの人 (各物質) の興味の度合いから歩行速度が変化することで、人同士の間隔が広がっていき (分離) 、ゴールラインを通過するまでの時間 (カラムの出口に到達するまでの時間) が異なります。

図7:カプセルトイエリアを駆け抜ける人々 (分離のイメージ図)
図7:カプセルトイエリアを駆け抜ける人々 (分離のイメージ図)

 このように個々の性質の違いを上手く使って、複数の物質が混在したサンプルを極性・吸着力・分子サイズなど、特定の傾向ごとに分けることができます。特に繊維製品は着色剤や加工剤など様々な薬剤を使用しており、多くの物質が含まれています。その中から特定の物質だけを探すために、「分離させる」という手法は重要になってきます。

※極性・・・分子内の電気の偏り。ここではカラム内壁との相互作用の強さを示す尺度。

化学試験事業部からの耳より情報!

 今回の化学物質のいろはでは、意外と知られていない液体クロマトグラフィーの原理を、身近な題材を用いて紹介しました。今後も日常の”気になる”をスッと腑に落ちる形で理解できるような内容を扱っていく予定ですのでご期待ください。

 本記事でご紹介した実験は手軽に行えるため、夏休みの自由研究などにも取り入れやすい内容です。ご興味のある方は「ペーパークロマトグラフィー」と検索してみてください。分離分析のエッセンスが体感できますよ!😊

 またニッセンケン公式Instagramでは、季節や記念日に関連したアパレル製品の話題や、ニッセンケンの中の様子などを日々更新中ですので、こちらも併せてぜひご覧ください。


【有害化学物質に関するお問い合わせ先】
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
ライフ アンド ヘルス事業本部 化学試験事業部
E-mail : oeko-tex@nissenken.or.jp

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