2017/07/15
No. 92 「九州豪雨をもたらしたのは「線状降水帯」って…」
思いつきラボ
2015/06/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2015年6月15日時点の内容です。
6月になりました。旧暦では6月のことを水無月(みなづき)と呼ぶのですが、梅雨に入る時期で雨も多いのになぜ水が無くなる月なのか不思議に思ってたところ、テレビニュースで旧暦は5月が梅雨の時期にあたり、6月は梅雨が明けて夏の炎天下で田んぼの水が無くなるから、という解説が流れていました。諸説あり真意のところは判りかねますが納得のいく説明ではありました。
しかし、最近の梅雨の雨は秋の台風のような豪雨をもたらすことも多く、水無月という呼称を全く連想させないような季節感になってしまいました。あまり異常気象の報道はない方がありがたいのですが・・・。
今回の思いつきラボは製品プリントの3回目となりますが、まず人気投票の全ての結果を報告します。
という結果になっています。
総ポイント数が110ポイントで、無投票が1点もありません。色の好みも影響はすると思いますが、Nissenken という同じデザインで比較したにもかかわらず得票が分かれたというのは、嗜好性(しこうせい)が分散しているからかも知れません。
参加者が55人と少ないですが、現代のファッションが多様化していることと同様の傾向となりました・・・と言いきれるほどのデータ数ではありませんが・・・。筆者としては面白い結果が得られたと思っております。ではまだ取り上げていないプリントについて説明します。
発泡プリントはプリントするインクに発泡剤を混ぜておいてプリントした後に熱を加えて膨らます技法です。膨らます高さは発泡剤の量で調整をしますが、膨らました表面はかさついた感じになってしまいます。それも味なのですが、光沢を加えたいときにはシリコントップの加工をして艶出しをします。仕上がり感は人それぞれの好みなので必ずシリコントップをするわけではありません。画像では判りにくいですが、シリコントップの方が光沢があります。
発泡プリントに使う溶剤はアクリル系かウレタン系のいずれかがほとんどですが、ニット生地にプリントする場合は生地伸びの関係でウレタン系を使うことが多いです。
フロッキープリントは1980年前後に流行ったプリントで、植毛加工とも呼ばれるように、短くカットした繊維を静電気を利用し樹脂に垂直に差し込んだシートを使う転写プリントです。インクではなく生地の上に繊維を乗せた様な加工になるので柔らかいイメージになります。繊維を立てているので、発泡プリントと同様に立体的な仕上がりになります。
当時裏毛素材のトレーナーやスエットスーツが流行った頃でもあり、裏毛にフロッキープリントしたものが市場に多く出回りました。ちょっとだけ話が逸れますが、“トレーナー”という商品名は当時人気のあったVAN(バン)が独自につけたもので国内だけで通用する呼称です。一般用語となるくらい大流行りした商品なのです。
芳香プリントはファンシープリントと呼ばれる変わり種プリントが流行った頃に出てきたプリントです。1990年頃に話題になったのですが、当時はまだ持続性がなく、長い期間香りが続くことはなかったです。洗濯すると洗剤の匂いに負けてしまうものもあり、話題ほどは市場に出回りませんでした。香りがするのは、小さいカプセルビーズに香りを閉じ込めて服がこすれるとビーズが弾けて香りがするという仕組みになっています。今ではこの技術も進化をとげていて、香りがする洗剤や味が持続するガムなどに応用されています。カプセルの弾ける時間に差を持たせて、何回洗濯しても匂いが続くものができているのです。
アクアプリントは通常時は何も見えないのですが、水に濡れると文字が出てくるというプリントです。筆者がこの開発に係わったのが1983年~1984年くらいの頃で、キッカケは撥水加工の撥水ムラの生地を見たことによります。
撥水ムラを確認する時は、生地をそのまま水に浸してから取り出して広げます。すると撥水の掛かっている部分と掛かってない部分とは水を吸った量の違いで濃淡が出ます。これがなんとなく柄に見えたのです。そこで意図的に撥水差を作って柄を出すという開発がスタートしました。
運良く傘を扱っている会社から開発依頼を受けたのですが、撥水差をつけるのは簡単な作業ですが、通常時(濡れていない時)に柄の気配をさせないということがなかなか出来ず、かなりの時間を費やしてしまいました。納得できるものは出来たのですが、本生産するには新しい設備を導入しないと量産できないことになり、その段階で断念した経緯があります。
同時期に他でも開発がされていて、しばらくしてから市場に出るようになりました。傘ではなくトランクスタイプの水着が販売されるようになりました。当時ウインドサーフィンが流行っていたころで、おもしろ商品として話題になりましたが、縫製するための裁断段階でどこにプリントが入っているか判らず、作業できないという問題があとから発生しました。
グリッタープリントとラメプリントは人によって定義が異なるので混乱しやすいですが、ここではグリッターが細かい形状のものをバインダーに混ぜ込んでいるもので、ラメは箔を細かく刻んだものをプリントした上に撒き散らして圧着するという使い分けをしています。
シルバーのグリッターをバインダーに混ぜ込んでプリントしたものと、赤のインクの上にラメを散りばめラメが取れにくくするためにシリコントップの加工をしています。どちらも見た目はキラキラのプリントということになります。
最後に蓄光プリントですが、太陽光や蛍光灯の光を当てておくと暗所で光るというプリントです。筆者が初めて蓄光プリントに関わったのが1984年ですので、随分と前から使われている加工なのです。
暗所に置くと光りますが、話題になるのが4~5年置きくらいで、毎年売れるような定番にはならなかった商品です。
初めて見る人にはインパクトは強いですが、何度も見ていれば慣れてきてしまい、あまり感激もしなくなってしまいます。今回の投票でも思うほどは票が集まらなかったのは、筆者が普段から蓄光商品扱っていて、職場のみんなが見慣れてしまったからかも知れません。
今回22種類の製品プリントを紹介しましたが、これだけで全てというわけではありませんが、ほぼ主だったものは作ることができたと思っております。プリントにも個性があり用途によっては向き不向きもあります。製品プリントを考えるときには思いつきラボのコラムも参考にしてみてください。
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防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
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