お知らせ
「ラナ・プラザの悲劇」から10年経ったいま
2023/05/31
-エコテックス®国際共同体がFashion Revolutionの活動支持を表明-
ニッセンケンが加盟するエコテックス®(OEKO-TEX®)国際共同体は、2013年4月24日に発生した「ラナ・プラザの悲劇」から10年目を迎えたことを振り返り、“Who made my clothes? – I made your clothes”など世界規模でファッション・アクティビズム運動を展開する【Fashion Revolution/ファッション・レボリューション】の活動を支持する声明を発表しましたので、お知らせいたします。
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「ラナ・プラザを偲び、Fashion Revolutionを促そう」筆者:リサ・ワグナー
今日、ラナ・プラザの悲劇的な出来事から10年が経ちました。2013年4月24日、バングラデシュにある8階建ての衣料品工場ビルは、世界最悪の産業災害と言われる予防可能な事故で倒壊しました。1,100人以上が命を落とし、2,400人が負傷、数え切れないほどの救急隊員や被害者家族が今日まで心に傷を負っています。倒壊の24時間前、壁に亀裂が入ったため作業員はビルから避難しましたが、翌日には管理者から再び作業を行うよう強要されました。この致命的な過ちは、世界中の繊維生産国が感じている大きなプレッシャーの表れといえます。実際のところラナ・プラザの惨事は、衣料品工場の事故として最初でも最後でもありませんが、この悲劇に端を発したメディアの動きは、人命を犠牲にしかねない問題を隠し持つグローバルなファッションサプライチェーン全体の透明性の欠如を露呈させました。
ラナ・プラザの崩壊後、英国を拠点とする活動家、キャリー・サマーズ(Carry Somers)とオルソラ・デ・カストロ(Orsola de Castro)は、Fashion Revolutionを設立。調査・教育・啓蒙活動を通じて、消費者・ブランド・政策立案者を巻き込み、世界中の衣料品労働者の透明性の欠如と闘う仕組みは、この10年間を通して、世界最大のファッション・アクティビズム運動へと成長しました。2018年には、抜本的な改革の構成要素となる10項目のマニフェストを発表、ラナ・プラザ崩壊から10年という節目に向けてさらに大きな注目を浴びました。その最終的なビジョンは、環境を保全・回復し、成長や利益よりも人を大切にするグローバルなファッション産業の構築が掲げられています。
一方で、世界のファッション業界は、長い間企業の自主的な取組に依存し続け、現状維持にとどまっていました。Fashion Revolutionなどの活動を通じて、世間の関心と知識が高まったにもかかわらず、健康や安全だけでなく、生活賃金、結社の自由、団体交渉の欠如が続いているのは、これらの分野における透明性の確保が進んでいないためです。
エコテックス®は、説明責任を果たすための重要な第一歩は透明性の向上であることを、早くから認識していました。実際、ラナ・プラザの崩壊と同じ2013年には、1995年にすでに制定されていたスタンダード1000に代わるエコテックス®ステップ(OEKO-TEX® STeP)認証を制定。STePはSustainable Textile & Leather Productionの略で、繊維・皮革産業の生産施設を対象としたモジュール式の認証システムで、環境に配慮した生産工程の実践に加え、労働時間・賃金・社会保険・安全・衛生要件の遵守もチェックにより、生産現場における社会的責任のある労働環境の改善を目的としています。
ステップ認証の対象は、繊維・皮革メーカー、ブランド及び小売業者です。世界で1,000を超える企業がステップ認証を取得している事実は、100万人以上の人々が国連の人権条約に則った安全で責任のある条件下で働き、公正な賃金を受け取っていることを意味し、大変喜ばしいことではありますが、業界の広い分野で透明性に大きなギャップがあることも十分承知しています。Fashion RevolutionのGlobal Fashion Transparency Indexの調査結果では、2017年の導入以来、透明性のレベル向上が強調されていますが、最新レポートでは、主要ブランドの50%が依然としてサプライチェーンに関する情報を全く開示しておらず、サプライヤーのうち労働組合数を開示しているブランドはわずか13%しかないと述べられています。
真の改革のためには、立法・規制措置は避けられません。Fashion Revolutionのような活動のおかげで、政策関連や企業の意思決定者に対する圧力は高まり、徐々にではありますが、着実により一層の透明性をもたらすようになりました。ラナ・プラザの悲劇からわずか数週間後、自主的な対策だけでは透明性や強制力がないため十分ではないという認識のもと、「健康と安全に関するバングラデシュ協定」(現在は「火災と建物の安全に関する国際協定」として知られる)が締結され、大きなマイルストーンとなりました。これは、ファッション業界における労働者の健康と安全に関する法的拘束力を持つ最初のブランド協定であり、バングラデシュをはじめとする世界の主要な労働者のすべての権利関係者から支持されている点が特徴で、現在200以上のブランドが署名している他、パキスタン協定など、衣料品労働者を保護するための他の協定にも大きな影響を与えました。この画期的な合意により、世界のファッションブランドは初めて、サプライチェーンにおける労働環境に対する直接的な責任を認めたのです。
改革を促すために悲劇的な事件が必要だったことを認めるのは悲しいことですが、バングラデシュや南アジアの他の国々にとっては大きな進展でもありました。しかし、世界の衣料品労働者の生活と労働条件を改善するためには、まだまだやるべきことがあります。2022年2月23日、欧州委員会は、あらゆる業種の企業に影響を与える持続可能なコーポレート・ガバナンスに関する指令案を提示しました。「企業持続可能性デュー・デリジェンス指令(CSDDD)」の草案には、人権と環境のデュー・デリジェンス義務に加え、責任あるコーポレート・ガバナンスの要件が含まれています。企業は、バリュー・チェーンにおける人権や環境リスクを特定し、予防・改善策を講じるとともに報告する必要があります。デュー・デリジェンス義務は、バリューチェーンの川上と川下の両方に関連しており、川上には製品を製造し(例:原材料の調達)、サービスを提供するための企業のすべての活動が、川下には販売・輸送・保管・廃棄に関する企業のすべての活動が含まれます。
欧州連合理事会は、2023年に「EUサプライチェーン法」の成立を目指し、欧州議会及び欧州委員会との間で最終指令に関する交渉をまもなく開始する予定です。指令が発効された後、加盟国は遅くとも2年以内に国内法に移管しなければならず、2023年1月1日に施行された「ドイツサプライチェーン法」も、指令に適合させなくてはならない可能性があります。「国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」への参加国の自発的な取組は広く失敗しているだけに、本法律が他の国も追随させることは、説明責任に向けた画期的なステップとなり得ます。
この10年間を振り返ると、私たちは進歩に刺激を受けると同時に、世界のファッション業界全体には依然として必要な改革があることを思い知らされます。不透明な商習慣を持つウルトラファストファッションの台頭とその一年で4桁の成長率は、敗北のようにも感じられますが、急速な技術の進歩や社会的・政治的要求の高まりは、より透明性の高い社会への希望を与え続けています。同時に、ここ数年の危機はラナ・プラザの悲しくも希望に満ちた学びを再認識させてくれます。災害は現在の脆弱性を明らかにする一方で、その打開を加速させることができます。Fashion Revolutionをサポートし続けることで、私たちはファッション業界の悲劇で失われ、犠牲となった命に敬意を表し、さらなる惨事の発生を防ぐことができます。
消費者・ブランド・小売業者・政策立案者……。その誰もが、Fashion Revolutionのウェブサイトで、「Good Clothes, Fair Pay」キャンペーンに署名し、私たちの服を作る人たちに生活賃金が支払われるよう要求するなど、より公正な行動を支援する方法を見つけることができます。
(原文:https://www.oeko-tex.com/en/news/blog/remembering-rana-plaza)
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